発表者:共同通信社産業部記者 伴武澄
1.アジア経済の発展段階
 ①NI ES経済の加速-プラザ合意が契機
  (1)対日で対米輸出競争力が強化された
  (2)始まった韓国・台湾いじめ 
 ②ASEANへの広がり一華僑マネーの参入  
  (1)商業資本から産業資本へ
  (2)中国のインフラ資金供与へ
 ③中国市場の過熱一経済特区の発展と華南経済圏の確立
  (1)グレーター香港
  (2)台湾海峡経済圏
 ④エマージング・マーケット・ベトナム、ビルマ、インドへ波及
  (1)雁型経済の崩壊
  (2)日本経済の危機

11.アジア的発展の特徴
 ①スピード
  (1)深圳特区は10年で200万人都市
  (2)経営者の投資判断 
②地域の発展
  (1)香港は植民地、台湾、韓国は分裂国家、シンガポールは島
  (2)中国は特区から沿岸地域へ
 ③ボーダーレス
  (1)華僑マネーの動き            ゛
  (2)無視される国家主権
 ④自由貿易原則
  (1)進む規制緩和
  (2)民営化
 ⑤技術の馬飛び的発展
  (1)世界の最新鋭技術の導入
  (2)既成概念の陳腐化
 ⑥利回り指向

 アジア経済のキーワード

 N I ES 韓国、シンガポール、香港、台湾の4カ国・地域を指す名称。経済協力開発機構(本部パリ、OECD)がアジアの発展状況を横目でにらんで命名した。
 ASEAN 東南アジア諸国連合の略。シンガポール、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ブルネイの6カ国で構成するアジアの政治組織。
 プラザ合意 19 9 5年9月ニューヨークのプラザホテルで先進5力国(G5)が集まって世界の貿易不均衡を是正するために独マルクと日本円を切り上げる約束をした会議。当時1ドル= 2 4 0円だった円の為替相場は一気に200円台を突入、今では1ドル=80円台へと円相場は3倍となっている。アジア経済が勃興した契機となる世界的会議だった。
 雁行型経済 故大来外相らが提唱した概念。日本を先頭にアジアNI ES諸国が追いかけASEAN諸国がさらに追いかけ、いわば雁が飛ぶ形でアジア経済が発展するという構造。しかし重層的複合的アジアの発展と日本のバブル崩壊で雁形が崩れた。
 APEC アジア太平洋経済閣僚会議の略称。欧州連合(EU)や米加自由貿易協定などに対抗、1989年1月、オーストラリアのホーク首相がASEAN6カ国を中心に日本、韓国、中国などに呼びかけた地域経済統合の構想を基にアメリカやカナダも参加した広域的な経済の話し合いの場が90年11月に形成された。事務局はシンガポール。
エマージングマーケット アジアだけでなく、中南米などの新興工業国の総称。日欧米を追いかけるN I ESやASEAN、インドシナ、インドまで含む発展の可能性を秘めた市場を指す。世界経済がボーダーレス社会に入っているため、国際的にカントリー(国)はもはや使わなくなっている。

世界トップ級のアジア企業
浦項総合製鉄(韓国)世界第2位の製鉄会社。2年後には新日鉄を追い抜いて世界ナンバーワンの粗鋼生産となることが確実視されている。
三星電子(韓国)世界最大の半導体メモリー企業。19888年に企業化、5年で世界の最前線に躍進した。
現代造船(韓国)19 94年韓国の造船受注量は史上初めて日本を抜いた。1995年に日本が韓国を抜き返したものの、韓国の造船ドックの新設が相次いでおり、90年代後半には名実とも韓国が世界の最前線に立つことは既定路線。
エイサー(台湾)パソコンメーカー。台湾は世界最大のパソコン生産基地となっている。その第一人者。マザーボードというパソコンの主要部品では世界トップ
エバ・グリーン(台湾)海運会社。コンテナ船の分野で880年代から世界トップ企業。エバ・エアーという台湾第2位の航空会社なども持つコングロマリット。
ニュース・コーポレーション(オーストラリア) メディア王、マードック氏所有のマスコミ企業。欧米中心に新聞、テレビ、CATV網を持つ。アジア最大の衛星テレビ会社、香港のスターテレビを買収、傘下に入れた。