来年4月から特石法廃止で参入
 全国農業協同組合連合会(全農)は、来年四月から韓国製ガソリンを輸入する方針を決めた。今年7月からの3カ年事業計画に石油製品の輸入業務参入を明記、6月末に正式決定する。国産に比べ最大二割後安い韓国製を系列スタンドに供給して、国内での価格競争で優位に立とうという戦略だ。石油製品輸入を事実上、元売り会社に限っていた特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)の来年廃止が決まっているが、これをにらんだ具体的な輸入計画は全農が初めて。ガソリン販売最大手の輸入を機に、低価格化に拍車がかかりそうだ。(解説13面に)
 全農は全国のスタンド総数の一割弱の約5000カ所の給油所を持ち、年間約250万klのガソリンを販売している。ガソリン販売では伊藤忠燃料など商社系を上回り、特に地方で強みを持つ。仕入れ先は出光興産など元売り7社。韓国からの輸人計画量は当面、最大で全農の総販売量の一割強、全国のガソリン消費量の0.7%程度だが、全農に続く輸入参人者が出るの
は確実とみられ、国内市況に影響する可能性がある。
 全農は韓国の有力石油会社の油公、現代精油、双竜とそれぞれガソリン愉人商談を進めている。米年4月以降の初年度の輸入量は保有タンクなど備蓄能力からみて、最大30万klにな
る見込み。
 韓国からのタンカー輸送に便利な金沢、新潟石油法地に荷揚げし、販売地域も日木海側中心とする考えだ。すでに韓国側からサンブルを取り寄せて油質などの分析を進めており、輸入計画の細部を詰めて今夏にもドル建てで輸入契約を結ぶ方針。
 大手商社などでは韓国製ガソリンは1リットル70-60円(運賃・税込み)で入着すると試算している。元売り経由の卸価格は東京で1リットル90円前後。20%近い価格差があり、ガソリンの低価格販売競単に十分対抗できると全農ではみている。
 全農による韓国製ガソリン輸人がガソリンの値下げ圧力となれば、内外価格差縮小につながる。全農の動きは特石法廃止をチャンスとみて、輸入業務への関心を強めている大手商社やスーパーを刺激するのは確実だ。

 【解説】安売り競争激化も
 全農がガソリン輸入の方針を固めたのは、従来石油元売りが握ってきた価格決定権を自らの手中に移す狙いがある。全農は各地の農協組合員に「より安い製品を供給する」目的で設以されただけに価格志向が強い。特石法廃止で安いガソリンを調達できる道が開ける以上、積極的に取り組むの当然といえる。
 全農が輸入で先行できるのは釧路、新潟、唐津など全国に8カ所の物流拠点を持ち、系列の
約5000軒のスタンドの80%に独自に製品を輸送してきた実績があるからだ。全農は出光興産、ジャパンエナジー、日本石油など元売り7社から製品の供給を受け、系列スタンドは表向き7社の看板のいずれかを揚げて営業しているが、各元売りと個別に強く結び付いているわけではない。
 一方、元売り会社が受ける影響は深刻だ。全農向けの納入価格は従来、各社横並びで決まっていたが、今後は全農側が安い韓国産を基準に値引きを要求してくるのは確実。生産コストぎりぎりといわれる国内の「業転物」(業者間転売品)よりもさらに安い韓国産ガソリンの価格に元売りがどう対抗するか大きな課題だ。
 市況への彫響も無視できない。全農系スタンドが安い輸入品で値下げに打って出れぱ、地
域で競合する他系列のスタンドも追随せざるを得ない。全農のスタンドは農村部や地方都市心に多く、これまで大都市周辺にとどまっていた安売り競争が地方に波及する可能性がある。
 また、大手商社の戦略にも影響しよう。グループの石油販売会社がスタンドを全国展開する伊藤忠商事、三菱商事などは元売りとの関係に配慮し、輸入に慎重姿勢だったが、全農が道を開けば、一気に輸入積極派に転じる可能性がある。さらに、大手スーパー、ディスカウントストアなどが、輸入ガソリン調達に回ることも考えられる。