1998年06月25日(木)
萬晩報主宰 伴 武澄

 6月25日は参院選の公示日。どうも盛り上がりに欠ける。共同通信大阪支社のあちこちでそんな会話が聞こえている。政治に新しい風が吹いている実感がないからではないか。そんな感想も聞かれた。

 1996年10月の総選挙は、小選挙区制の導入があり多少の新味があった。新進党が躍進するかもしれないという淡い期待感もあった。今回は菅直人が率いる民主党があるではないかという反論もあろうが、民主党に大同団結のイメージはなく、労組臭を色濃くする烏合(うごう)の衆ではないかというマイナスイメージが強すぎる。

白票は無効という現行制度の矛盾

 毎日新聞は24日付朝刊から政治面で「投票に行こう」というキャンペーン記事の連載を始めた。作家の石川好氏が呼びかけ人となって「投票に行こう勢」運動を開始した。

 初回の呼びかけは「政治に不信なら白票を」だ。「有権者の2割が不信任の白票を投じれば1900万票で第2党どころか第1党に肉薄する『巨大なノー党』になる」というのが趣旨だ。

 筆者も前回の総選挙で3枚の投票用紙を白紙で投票した経験がある。その前の選挙で投票した人物が当選直後に党籍を変更した。筆者は人物に投票したのではなく政党に投票したつもりだったから「こんな不合理があっていいものか」と怒りが収まらなかった。それなら「白票」で不信任の意思表示をしようと考えた。

 ところが、日本の選挙法では用紙にいたずら書きをしようと白票のまま投票しょうと候補者名が書かれた用紙以外はすべて「無効票」としてカウントされる。現行の制度下では、だれにも投票したくないという選挙民の選択肢はないに等しい。集計方法の欠陥のひとつではないかと思っている。
街角で「オーレ、ジャポン」

 ところが、この白票による選挙民の意思表示は一部の行動ではない傾向が現れているのだ。1996年の総選挙では政治部の選挙報道班に参加して貴重な体験をさせてもらった。北信越ブロックを担当して、気が付いたことだが、無効票が異常に多い選挙区がいくつか散見された。

  開票の結果、なんと「無効票」が社会党から党名変更した社民党の票数を上回っていた選挙区が何カ所もあったのである。マスコミは投票率が選挙の度に下がる のは「無関心層」が増えているからだと報道している。確かにその一面がないとはいえない。しかし、投票するに足る候補者が見当たらないという側面を見逃し てはいないだろうか。

 もし、投票場の注意事項に「投票したい候補者がいない場合は投票用紙に『×』と書くように」とでもあったら、石川 氏がいうように「×」の票数は「第1党に肉薄する」どころか第1党を凌駕するかもしれない。「×」と書くためにもっと多くの人が投票場に足を運ぶかもしれ ない。そうなれば「×」票が確実に自民党を上回るはずだ。

 萬晩報は04月02日付けコラム「 5年前の興奮を思い起してもう一度わくわくしよう」を書いた。「国民がわくわくすれば景気もよくなる。」という言葉で締めくくったことを思い出した。参院選が面白くないなら面白くしたらどうだろうか。

  わくわくするには「白票」を投じることだろう。「白票党」が第一党にのし上がれば、選挙の勝者は自民党でも民主党でもない。有権者が勝者となる。マスコミ も開票日翌日の一面トップに「無効票が○○%、選挙に不信任!」の横見だしを付けざるを得なくなる。街角で「オーレ、ジャポン」の歓声が上がるに違いな い。

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