日ばかり劇場、見得だけのトランプ
24日、トランプがイランとイスラエルが停戦に合意したと一方的に発表した。
トランプ米大統領は21日、自らのSNSで、米軍がイランの核施設3カ所に対して攻撃を行い、「大成功」だったと表明。イランが和平に応じない場合はさらなる攻撃に直面すると警告した。その後、トランプはホワイトハウスで演説し、「攻撃は壮大な軍事的成功だった」と評価。「イランの主要な核濃縮施設は完全かつ全面的に消滅した」と述べた。ちょっと待て、アメリカによるイラン空爆は明らかに戦争行為である。アメリカという国は、大統領が命令すれば、空軍機が他国を攻撃できるのか。アメリカの宣戦布告権限は議会にあり、大統領にはない。今回のトランプの行為は憲法無視で、弾劾に値する行為であるのに、議会から一切声が上がらない。これはどういうことなのだろうか。戦地で人を殺しても犯罪とならないのは「戦争」だからである。平和時において、軍隊が人を殺せば、これは犯罪となる。議会の承認もなくイランを空爆させたとなれば、完全に犯罪人ではないか。
トランプ劇場は6月6日始まった。米ロサンゼルスで、連邦当局による非正規移民の一斉摘発が始まった。抗議する市民と当局との衝突が起き、8日には、トランプ大統領が州兵を派遣、デモ参加者らを強制排除するため催涙ガスやゴム弾を使用した。大統領による州兵派遣には、カリフォルニア州知事やロサンゼルス市長は反対の声を上げ、大統領を非難した。だが、トランプはさらに海兵隊の派遣も決め、アメリカが分断されるのではないかという危機感が高まる中、13日、イスラエルが突如、イランの核施設空爆を開始した。世界が驚いている最中、トランプは侵略を受けたイランに対して「無条件降伏」を要求。「2週間以内にアメリカがイラン攻撃をするか決める」と参戦を示唆した。その声の乾かぬ21日、本当にイラン空爆の挙に出てしまった。この2週間、トランプ劇場は誰もが想像できないような展開が続いている。「何のために」と頭を悩ませているうちに翌日にはまた独断行動が起きている。
そもそも、核施設に爆弾を落とせば、濃縮ウランの核分裂反応を起こさせる可能性が高い。もし核施設で核分裂がなかったなら、そもそも、核開発など行っていなかったか、すでに核物質は他の安全な場所に移されていた可能性がある。攻撃された側は何も語らないが、損害を与えていないならば、本来は攻撃を続けなければ意味がない。それを早々と停戦させる意味もまた分からない。
アメリカが直接イランと戦争するはずはないと多くの人が考えていた。そのアメリカがイランの核施設を直接攻撃しなければならない理由がまず不明である。イスラエルに核を使用させないためだったかもしれないという説がないでもない。なるほど、放っておけば、イスラエルはとことん核施設に攻撃を加える。しかし、地下深くの施設の破壊には核弾道の使用が不可欠になる。いまのネタニエフならやりかねない。そうなると中東一帯は破滅的結果を招く。そうならば、アメリカが早めに「空爆」に参戦し、「イランの主要な核濃縮施設は完全かつ全面的に消滅した」と宣言し、イスラエルのこれ以上の攻撃を止めた意味はあるのかもしれない。