戦争モードに入ったこの地球
カナダで開催されたG7は、首脳宣言をまとめることができなかった。開幕直前の13日にイスラエルがイランを先制攻撃したが、分断が深まる世界情勢になんら明確な対応策を示せなかった。さらに自国第一主義を掲げるトランプ米大統領は会議途中で帰国し、G7の機能低下が浮き彫りになった。問題は、焦点となった中東情勢に関して「イスラエルの自衛権」を容認した上で、イランを「地域の不安定化やテロの源だ」などと非難する声明を出したことだ。イスラエルの一方的攻撃を非難するべき立場に置かれた首脳たちの良識的発言がまったく聞こえてこない。
トランプは途中帰国しただけでない。ワシントンからテヘランに向け「無条件降伏」を発信した。アメリカとイランとの間で戦争が始まったわけでもない。そもそも、3月時点で、アメリカのギャバード国家情報長官は「イランは核をつくっていない」とホワイトハウスに報告していた。MAGAの仲間も今回はトランプに批判的だ。ホワイトハウスでトランプ孤立という話も出ている。
イランの核問題は第一次トランプ政権で、2018年、オバマ前政権が締結したイランとの核合意から離脱したことから迷走を始めた。ウラン濃縮は原発という平和利用においても不可欠な行程だが、濃縮率が90%を超えると核兵器につながるといわれる。IAEAはイランの濃縮率が60%に近づいていると「警告」したことがあるが、イランは「核兵器」を否定した。本当にイランが核兵器開発を目指しているのかそうでないのかは判断が難しい。日本だって、やる気になれば核兵器をすぐつくる能力を持っているといってもいい。原発を捨てきれないのは政権の中枢のどこかで「核兵器」にこだわっているからだともいえよう。
13日、イスラエルが空爆したのはイランの核施設。ネタニエフ首相はずっとイランの核開発にこだわり続けている。中部フォルドゥのウラン濃縮施設が最重要標的。首都テヘランの南約200キロの山岳地帯にあり、中部ナタンズのウラン濃縮施設と並ぶイラン核開発の中枢拠点。地下80メートルで濃縮が行われているため、空爆のよる破壊は極めて困難とされている。思い出したのは20年前のイラクだ。大量破壊兵器を持っていることを理由にアメリカはイラクを攻撃、フセイン大統領を逮捕・処刑した。アメリカとイスラエルで、イランの最高指導者の暗殺の是非を議論している。そんな議論はやめてほしいい。そんな情景が頭をよぎった。今、中東情勢を止める指導者がいない!