11月25日、賀川が創設した国際平和協会の現会長であり、 元共同通信記者、 現高知市議の伴武澄1 氏をお迎えし、 賀川の平和運動の一端をお聴きした。 以下にその一部を紹介する。
 彼の『友愛の政治経済学』(『Brotherhood Economics』の邦題 )の「プラザー」はみんな兄弟」というキリスト教の考えであり、 これは賀川の平和論でもある。 戦争の要因は、 資源の奪い合い、 貿易の不均衡、 人種間の抗争などいろいろあるが、 大きな要因は経済だと賀川は考え、 経済を変えれば戦争は減るのだ、 戦争が起きない社会(世界 )のシステムを作らなければいけないとの強い信念があった。  「国際平和協会」は、 首相官邸で産まれた多分唯一の財団法人だろう。 「国際平和協会」を動かす下部団体、 運動組織として「世界連邦建設同盟」(現在は「世界連邦運動協会」)を作った。 この支部が瞬く間に全国に広がる。 自治体の賛同も増え、 真っ先に手を挙げたのが京都の綾部市だ。 今の世界連邦自治体協議会の本部がここにある。 綾部市は、 大本教とグンゼの町だ。 戦前は生糸の産地で、 その社長が波多野鶴吉というクリスチ ャンで、 農家の娘たちを女エとして雇い、 お父さんに出資してもらい配当するというキリスト教信仰に基づく、 ある意味協同組合的株式会社を作った。 大本教は「世界は一つだ」と言って戦前に弾圧を受けた。 そういう土地で第1号の世界連邦都市が生まれた。 世界連邦ができた時は、 日本を離脱してそちらへ行く、 今では信じられないが、 そうい う運動が燎原の火の如く広がった。 国会の中や宗教界にも「世界連邦委員会」がある。 この運動が、 アメリカでもヨ ーロッパでも起こる。 アメリカではシカゴ大学のハッチンス総長が世界連邦の憲法草案を創った。
 国連には安全保障理事会の5か国が拒否権を持っていて、1国でも反対すると物事が決まらないが、世界連邦は1国 1票、 大国も小国も1票の権利がある。 世界警察という組織も創る。 警察は国内の組織。 国外といろいろやるのは軍隊。 世界が一つになったら、軍隊は要らない。 戦う相手がいないのだから。 警察がいればいい。 今回のガザの問題であれば、 それを警察が取り調べて、裁判にかけ、 どちらが正しかったのかと判決を出す。 そういう国を彼は作りたかったのだ。 賀川の構想を取り入れ、 フランスの外務大臣シュ ーマンは、 フランスとドイツの係争地ルール地方を共同統治する案を出し、 それが欧州石炭鉄鋼共同体、 のちのEC、 EUへと発展した。(以下略)
 賀川の活動を受け継ぐ伴先生ならではの講義に、受講生19人、一般聴講者9人が熱心に耳を傾けました。(藤田 進)