行くの行かないとの曲折があって、結局、行くことに決めた。そもそも「委員会視察」には胡散臭いものを感じていた。一般社会で「議員視察」と聞けば、「物見遊山」に違いないと受け止めているはずだ。委員会が委員の日程を調整し、スケジュールも決まったものをどうして「行きたくなくなったか」。公務は「視察」そのものであって、行き帰りの旅程は「移動時間」との認識があった。たぶん一般社会の常識だろうと思う。

 今回の視察日程は、10月30日、31日。武蔵野市のオーガニック給食の実態調査を中心にスケジュールが組まれ、個人的には魅力的な視察内容だった。

 事の始まりは僕が、議会事務局に帰路の便を別行動させてくれと要望したことだった。それに対して当局は「高知空港から高知空港まで」すべての日程が「公務」だというのである。だから別行動は「公務を外れることになる」と強弁するのだ。そんな窮屈な視察を強要するなら、視察そのものを取りやめると言ったら、「相当な理由なしに欠席は出来ません」「公務を欠席するなら引責を求める声が出るかもしれない」と脅すのである。最初に僕が求めたのは公務の欠席ではなく、帰路の便の変更だけなのである。しかもキャンセル料は自分が支払うとまで言った。

 それぞれの議会には議会規則が条例として決められてある。そんなものが出来たきっかけはあまりにやりたい放題の議員に対して世間の批判が高まり、自ら姿勢を正す意味で規則や条例が存在しているものと理解している。自らの良心と公序良俗に反しない限り、議会人は個人としての行動は自由であるべきなのだ。

 今回の帰路変更の理由は翌11月1日に古巣の共同通信社のOB交流会への参加だった。社長以下、各局長らも参加する集まりで、僕自身が高知市議会議員に当選したことを報告する意味合いもあり、自分の認識では私的行動ではないのだ。報道機関との良好な関係構築そのものは議員にとっての仕事の一つだと考えている。

 委員会視察への参加は義務かどうかについて、明確な判例はないらしい。過去に欠席した市議に対して議長が、厳重注意処分とし、多くの記者の前で発表したことに対して市議が名誉棄損だと訴えたケースがある。名古屋高裁は控訴を棄却し、市議は敗訴となった。このケースでは、控訴人は,処分の無効や取消しを主張したのではなく,控訴人の人格権としての名誉が毀損されたとの主張をしたにすぎなかった。