9月29日の日経新聞を読んでいて「ホンダがアメリカでEV発売」という記事があった。アメリカで4万ドルという車両価格は最近のEV車として安く方かもしれない。カッコ内には日本円=600万円とあった。これは輸入車並みの価格だと思った。つまり僕の為替感覚が狂っていたのである。1ドル=150円で換算すればこういうことになる。当たり前の話である。だが、日本で600万円もする車はそう売れるものではない。円安によってアメリカで普通の価格が日本ではべらぼうな価格になっているのである。

思い起こせば、民主党内閣の時代、1ドルはほぼ100円という感覚であった。しかし、安倍政権以降の円安誘導で日本人は購買力を50%失ったことになる。かつて1ドルで輸入できていた品物が今では1ドル50セント支払わなければ購入できない。貿易統計を遡れば、日本経済はずっと輸出が輸入を上回っていた。しかし、このところは大幅な輸入超過となっている。ため込んでいたドルが流出していることになる。一番の原因は原油価格の高騰だろうが、円安によって円換算の輸入額が急増していることも大きな要素となっている。1ドル=100円だったら、今でも輸出額が輸入額を上回っていたはずである。

消費者の損失はもっと大きい。輸入品はそのまま消費者の手に渡るわけではない。普通、工場を出荷した製品は、卸売、小売とそれぞれ約20%経費を上乗せされて販売される。輸入品も同じである。100円の品物なら小売りは144円となる。それが150円になればどうなるか。216円である。その小売価格に消費税が10%上乗せされる。それぞれ158円、238円となる。50円の円安によって80円の負担増となる。これまで消費が低調だったため、卸売りや小売りがその差額を圧縮して販売してきたが、ここ数年の値上げラッシュは単に輸入価格の上昇分を上乗せしただけではない。販売経費も上乗せされているのだ。そして一番重要なのは、消費税である。最終価格の10%だから、物価が上昇しただけ消費税もよけい取られることになる。GDPの約半分が消費である。消費が約250兆円だとすると、消費税は25兆円。ここ3年で物価は10%内外上昇しているから、濡れ手に粟で2.5兆円の税収が政府の手に入ったことになる。