月曜日に、高知市旅館ホテル協同組合幹部との懇談会があった。コロナ前と比べて、宿泊はほぼ回復状態だというのだが、問題は空き室があっても「7割しか予約を取れない」「かき入れ時のよさこい祭りでも頑張って8割だ」というから驚いた。ベッドメイキングのスタッフが不足しているからだ。調理場の人員が少なく、三翠園など夜の食事を出さない旅館も少なくない。飲食業の多くが休む年末年始などはどうするのだろうか。県や市が観光客誘致にやっきとなっても宿泊する場所がこれ以上確保できないとすれば、どうなるのだろうか。旅館やホテルはコロナで従業員を大幅にカットしたが、その従業員はほとんど元の職場に戻らない。多くのホテルや旅館は背に腹には代えられないと、外国人の採用に傾斜しているが、ベトナムなどでも、もはや日本で稼ごうという人が少なくなっている。

何が原因かと言えば、賃金の問題であろう。政府は最近、最低賃金を全国平均で1000円以上と決めたが、1000円といったとしても、1日8時間働いても月16万円にしかならない。ヨーロッパなどでは時給3000円は当たり前。もちろん物価水準も違うが、ここへ来て日本経済が上向きになり、15カ月続けて物価高が2%以上になっている。不思議なことに日本の物価統計には食料品とエネルギーが外されている。これらを加味すれば、4%近い物価高が続いているはずだ。先月、連合は、今年の春闘で正社員の賃上げ率は平均3・58%だったと発表したが、物価高に追い付いていない。

ちょっと前まで、日本は世界で最も暮らしやすい国だったが、今ではそうではない。最も暮らしにくい国になっているかもしれない。コロナから脱却してさあこれからという現在、右肩下がりの経済をどう立て直すのか。地方と大都市との格差がますます広がる中で「観光誘致」など言っていられなくなるのではないだろうか。