ドイツでは、2022年6月から8月の夏休み期間、電車・バスの公共交通機関が乗り放題になっている。料金は月額9ユーロ(約1,200円)という破格だ。エネルギー削減対策の一環で、ドイツ連邦議会は25億ユーロ(約3,400億円)の予算を承認した。ふだんは自動車を使う人も含め、人々に公共交通機関の利用を促す狙いがある。このニュースをきっかけに地方の公共交通機関の問題を考えた。

 面白かったのはフランスの公共交通機関に対する考え方だった。1982年に国内交通基本法を制定した。その中で、基本的人権の一つとして「交通権」を定め、自治体による公共交通機関の整備・運営のために目的税として「交通税」の徴収を認めた。従業員9人以上の事業所に対して支払い給与総額の1.75%-0.55%の徴収を可能にしている。例えば、70万人の高知県で30万人の給与所得者がいて、平均所得が300万円と仮定すると最大157億円の交通税となる。ちなみにとさでん交通の年収は50億円である。運賃を無料にしてもあまりあるということだ。

 おかげでフランスの公共交通機関のコストにかかる料金収入は2割強にとどまっている。イギリスは7割、ドイツは4割5分。ちなみに日本は7割強、アメリカは2割である。つまりフランスの公共交通機関は「税金」で成り立っている独自の考え方をもっていることになる。日本の大都市圏は別として、どこの自治体も将来の公共交通機関の在り方について危機感を持っている。公共交通機関の在り方はもはや環境やエネルギーだけの問題ではない。教育や福祉を含めた地域の存続を左右するという問題意識を持たなければならない。

 高知県は森林保全のため、33万住民、1万4000事業所に対して、年間500円以上の森林税と徴収している。公共交通機関に対して同じ考え方を導入できないものだろうか。あくまで一つの問題提起である。