台湾海峡の危機。煽っているのはどう見てもアメリカ側にしか見えない。3日、ペロシ米下院議長一行を乗せた「United States」の国章をつけた航空機が台湾入りした。アメリカ政府は、ペロシ議長の「意思」だと強調している。しかし、台湾入りの前に米海軍は大型空母を台湾海峡の並べていた。しかもこの航空機は米軍のそのものの機体だった。ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、アメリカを中心に台湾海峡の危機についても言及し始めた。自民党もアメリカに煽られ、防衛費二倍増を言い始めた。元国防相交換のコルビー氏は「二倍では足りない。中国の脅威に対抗するには三倍増が必要だ」と日本政府をさらに煽っている。

ペロシ議長の台湾入りの数日前、米中首脳による電話会談があったばかりの出来事である。習近平総書記は、ペロシ議長の動向について「火遊びをすればやけどするだけだ」とけん制。「米国側がこの点を明確に理解することを願う」と述べた。また「一つの中国」の原則を堅持するよう米政府に求め、中国は台湾の独立と外部の干渉に断固反対すると強調した。
 一方、バイデン大統領は台湾に関する米国の政策に変更はなく、現状の変更もしくは台湾海峡の平和と安定を損なうような一方的な動きに強く反対すると伝えた。そんなやり取りがあった矢先だった。

ペロシ議長は台湾で蔡英文総統と会談した。会談で、ペロシ氏は「米台の団結を明確にするため訪問した」と述べ、台湾の民主主義を支える考えを強調した。そもそもアメリカ合衆国ナンバースリーの下院議長が台湾を訪問するのは、一つの中国を約束した米中合意に反する行為だと思う。

当然ながら中国側は猛反発。王毅外相は3日、「中国の平和的台頭をぶち壊すことは完全に徒労で、必ず頭を打ち付けて血を流す」と非難、謝鋒外務次官は2日深夜に米国のニコラス・バーンズ駐中国大使を呼び「強烈な抗議」をした。
 台湾の国防部(国防省)は3日、中国軍機27機が防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。うち22機が台湾海峡の事実上の停戦ライン「中間線」を、台北に近い北側で越えた。中国人民解放軍は即座に対抗措置に動いた。2日夜から、海空軍やロケット軍、サイバー攻撃を担う戦略支援部隊などが台湾の北部、西南部、東南部の空海域で統合演習を実施している。
 4日から台湾を取り囲む6カ所で軍事演習を始め、大陸からミサイル9発を撃ち込んだ。台湾本島の上空を飛び超えたものもあった。

バイデン大統領が言うように「台湾に関する米国の政策に変更はない」かもしれないが、中国に対しては相当に危険な煽り運転をしていることは確かだ。アメリカの危険な行為で「あおり」を受けるのは中国だけではない。「民主主義的価値観の共有」を理由に対中強硬姿勢を強要されるのだけは避けなければならない。

台湾もまた、ペロシ議長の訪台を歓迎ばかりしてもいられないはずだ。すでに中国から台湾製品の締め出しが始まっており、万が一、不測の事態が発生するなら真っ先に犠牲を負うのは台湾国民であるからだ。台湾海峡の危機に対して、アメリカ軍が「参戦」するという保証はないのだから。