西側の経済制裁によってロシア経済は破綻に向かうと思われていたが、意外にそうでもない。ウクライナ侵攻後に一時、40%下落したはずに通貨ルーブルは侵攻前の水準にまで戻っている。多くの経済評論家がロシア経済のデフォルトはまだ起きていない。理由は単純だ。ロシアからの原油・ガス輸出はほとんど減っていないからだ。ロシア産の原油・ガスの禁輸という強い制裁を打ち出したアメリカとイギリスはそもそもロシアからほとんど輸入していない。そもそも経済制裁として打ち出したロシアの銀行との取引凍結では、エネルギー取引を例外措置として明記している。ロシアの輸出の3分の2を占める石油・ガスが例外としたのでは、経済制裁措置は初めから底が抜けていたというのが実情。BBCによるとヨーロッパ諸国は1日10億ドルの石油・ガスを購入し続けている。これは対ウクライナ軍事支援の総額に匹敵する。これでロシア経済が破綻するわけはない。

一方の日本はどうだ。1ドル=126円をつけた円ドル相場はほとんど底が抜けそうである。早晩、130円をつけるというのが市場の受け止めである。黒田日銀総裁は「日本経済が立ち直った兆しをみせていない」と金融引き締めに消極的どころか、金融政策をゆがめている。国際金融の常道では、通貨の下落には金利の引き上げで対抗するのが当たり前。それしか道はない。メディアは連日、物価上昇を報じており、日本経済の将来に懸念を示している。賃金の上昇なしに物価が上がれば、経済が縮小するのは常識。日銀はメンツにこだわっている場合ではない。本来なら、政府はメンツにこだわる黒田総裁に圧力をかけるべきなのだが、岸田首相も「為替相場には言及しない」とどこ吹く風。ウクライナ侵攻の余波を受ける日本国民はたまったものではない。