Zaporizhzhia Nuclear Plant

ロシアによるウクライナ侵攻から1週間が過ぎた。数日で首都キエフは陥落するものだと思っていたら、そうではない。少なくとも4日時点では。ウクライナの抵抗が予想以上なのか、ロシアの戦術がちぐはぐなのか分からない。圧倒的力を持っているはずのロシア空軍の飛来は見られないし、キエフに迫っているはずの機動部隊の進撃はない。一部で病院や学校などへの攻撃は伝えられているが、電力や通信・放送は維持されているところをみると、ロシア側は市民への影響を与える攻撃を躊躇しているのではないかとさえ思わされる。市街戦は起きていない。ましてウクライナ市民によるゲリラ戦も起こっていない。

都市の市民生活にとって一番重要なのは食糧の確保であろう。だが、不思議なことにまだ「飢え」へのうめき声は伝わって来ない。戦闘の激化でサプライ・チェーンが機能しているとは思えない。ウクライナ国内で何週間分もの備蓄があろうはずもない。電力や燃料が枯渇すれば、備蓄があっても5000万人もの人口を養えるはずはない。ウクライナがこれから直面する苦境はまさに飢えへの対応ではないかと考えると戦慄せざるをえない。

戦争は突如としてロシアによって仕掛けられた。経済制裁がロシアを困窮させるには時間がかかる。ウクライナの人々がどこまで耐えられるか。今、世界中でウクライナに対する同情が広がっているが、西側の軍隊がウクライナとともにロシアと戦う気配は起きていない。アメリカもNATOも一切動く気配をみせていない。孤軍奮闘ではプーチンのロシアには勝てないだろう。

ウクライナ当局は4日、同国南部にあるザポロジエ原子力発電所がロシア軍に制圧されたと発表した。同原発では同日、ロシア軍の砲撃で火災が起きた。100万キロワットクラスの原発6基がある。いまのところ放射線量に異常はないということであるが、爆発すれば、チェルノブイリの10倍以上の被害をもたらすとされている。ウクライナが焦土と化す前にロシアの侵攻を止めるには、ウクライナの中立化しかないと考える。徹底抗戦をして国土が焦土と化すより、ウクライナはいったん譲歩する道を考える時が来ている。