2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を開始した。22日にウクライナ東部の親ロシア地域の独立を承認し、人々の保護を「目的」に国境を越えた。ロシア軍は直ちに制空権を確保し、ウクライナ軍の機先を制した。各地で戦闘が始まったという報道はあるものの、ウクライナ軍が大規模にロシア軍と本格的戦闘に入ったという情報はいまのところない。一方的にロシアの「なすまま」のようなのである。ゼレンスキー大統領は「総動員令」を発布し、男子の国外移動を禁止した。ロシア軍は15万人の軍隊でウクライナを包囲してきたが、ウクライナ自身20万人の兵力を持ち、予備役90万人を加えると110万の軍隊を擁するヨーロッパ屈指の軍事大国。その動向が一切伝えられない。もしかしたらウクライナ軍はロシアの侵攻に対して動かないのかもしれない。

 前回の「ウクライナに見る国境」ではウクライナという国は西側につくのか、ロシア側の立つのか単純な二者択一にはない、ということを解説した。それもいったん戦端が開かれたら状況が変わるのかもしれないと思っていたが、そうでもないようだ。ロシア軍が首都キエフを包囲し、ウクライナ国の存亡がかかるような状態になるまでは動かないのかもしれない。あるいはそれでも動かないかもしれない。

 24日のロシアによるウクライナ侵攻のニュースに接して、第二次大戦の引き金となったナチスによるズデーデン割譲を思い出した。直前のヒットラーとチェンバレンとのミュンヘン会議でイギリス側が全面譲歩を余儀なくされ、チェンバレンの弱腰外交が大戦を引き起こしたとされる。

 ウクライナはNATOに接近していたものの、加盟国ではないため、ロシア侵攻によってもNATOには防衛義務はない。ある意味ウクライナは孤軍奮闘を余儀なくされている。万が一、NATO軍が加勢することになれば、ロシアとの全面戦争に突入する可能性があり、西側によるウクライナ支援はロシアに対する経済制裁しかない。ズデーデンと同様、ロシアによる「やったもの勝ち」に終わる可能性が小さくないのだ。