高揚感のない解散総選挙 夜学会215
14日、岸田文雄首相は衆院を解散し、31日投票にむけて事実上、総選挙がスタートした。個人的印象でいえば、高揚感がまったくない。自民党総裁選では何か変わるのではないか期待感があったが、今回の解散には「大義」が感じられない。そもそも岸田内閣は4日しかたっていない。首相として所信を表明しただけで、何も行わなっていない。コロナ対策すら打ち出さないうちに、たった10日で「解散」はないだろう。
総選挙に向けての各党の公約や一応出そろったが、どの党を見てもバラマキのオンパレード。対立軸といえば、消費税の減免ぐらいだろうか。数日まで知らなかったが、ドイツは昨年7月から半年を限定して部分的だが付加価値税を20%から5%に引き下げ、イギリスもまた食品などを中心に同様に5%に減税、税率を元に戻しつつある。給付金を含めて迅速なコロナ対策を実施した。世界的趨勢で言えば、ウイズコロナ、つまりコロナとともに生きる方向にかじを切っている。ワクチン接種率が一定に高まれば当たり前の方向だと思うのに、日本ではこれからも巨額の財政支出を実施しようとしているのである。
新型コロナは時期が来れば、いつかは収束するはずである。それに比べて総選挙は向こう4年の政権をどの政党に委ねるのかを問うのが本筋である。例えば、脱酸素社会を目指して、石炭、石油への依存からどのような代替エネルギーを求めるのか。日本ではいまだ原発依存が不可欠だという意識も強い。小泉元首相ではないが、原発問題は与野党の大きな争点となってもおかしくない。自動車のEV対策などはEUや中国に大きく引き離されている。個人的にいえば、人口問題、少子化問題にどう対応するのか。コメ価格の長期低落も食糧自給率の低い日本にとって国家的な大きな課題であろうと思う。
そもそも8年にわたるアベノミクスによって日本経済はどのように変化したか。詳細な検証が必要だと思う。17日付け赤旗日曜版は、①大富豪の資産は2012年の6・1兆円から2021年は24・6兆円へ4倍に増えた②企業の内部留保は333兆円から466兆円へと増加した③逆に勤労者の実質賃金は396万円から373万円に22万円も減少した―などと批判する記事を掲載している。立憲民主党も9月に同様の調査報告を発表している。
経済指標の比較は、使用する統計によって違う結果をもたらす場合もあるが、アベノミクスが国民全体の生活水準を高めたとは考えられない。10月1日の夜学会「委縮する日本」で報告したように、実質為替でみると日本経済はこの9年間でも大きく縮小しているのである。一言でいえば、アベノミクスは多くの国民に何ももたらさなかったのである。そんな経済を継承する自民党の岸田内閣への対抗軸としていの一番に掲げるべき政策なのではないかと考える。