在カブール日本大使館は館員12人全員が8月17日に国外に撤退した。15日にガニー大統領がタジキスタンに逃亡し、タリバンは大統領府を制圧し、勝利宣言したからだ。館員の命は大切だが、アフガニスタンで次に何が起きるのか政治情勢を見極める仕事まで放棄していいのだろうか。気にかかるのは、誰がカブール日本大使館の撤退を命じたかということだ。そして邦人保護は大使館の重要業務の一つであるはず。真っ先に逃げ出したのでは「業務放棄」としかいえない。韓国大使館も一時、撤退したが、その後に一部の館員が戻って韓国人救出の業務にあたったいうではないか。思い出したのは「終戦間際に多くの日本人を残して満州を去った日本国陸軍である」。アフガニスタンはタリバンの統治下にはいったのは事実だが、国交断絶したのではない。「国民の命と財産を守る」といっていたのは誰だったのか。安倍政権の官房長官時代、何度も何度も聞かされた常套句だった。

調べてみると、ソ連がアフガニスタンに侵攻し、支配した時代、日本は大使館を格下げし、代理大使を置いていた。国交は続いていた。ソ連が撤退し、アフガニスタンがタリバンの支配下に入ると日本はタリバン政権を承認しなかった。9.11以降、アメリカによる空爆でアフガニスタンはアメリカによる「傀儡政権」が成立すると日本は新政権を国交を結び、大使館を再開した。

不思議なことに、国家は周辺国を含め国際社会から「承認」されて初めて「国家」として存立することになる。タリバンはカブール制圧後に新政権樹立を宣言したが、国際的にはまだ承認されていない。一般的には革命などによって旧体制が崩壊した後に誕生した政権は旧体制の残した債権債務を引き継ぐ約束になっている。これがクリアーされないとまず国際社会に承認されない。政権が国土を実効支配していても単なる「地域」としかみなされない。