5月22日(金)の夜学会
テーマ:「官僚をなめすぎた安倍首相」
時間:午後7時から
場所:WaterBase
講師:伴武澄

新型コロナウイルスが世界で蔓延しはじめてから、当然ながら国家が内向きになっている。国の指導者たちは、国民の自由を制限せざるを得ない事態に直面し、国民に協力を求め、命のために自制を求めている。Stay Homeは世界共通の掛け声になっている。こんな時期に「不急不要」な法案を国会に提出したのがアベノミクスだ。検察庁法改正である。1月、閣議で突如として黒川東京高検検事長の定年延期を決めた。検察庁法の定年は63歳。それを6カ月特例として延長した。法的根拠がないという批判に対して「法解釈を変更した」と閣議決定を事後正当化した。違法な人事をそのままにはできないと考え、今度は検察庁法の改正案を上程した。
だれもが何だこれはと考えた。なんで今必要なのか考えた。どう考えても黒川氏の異例な人事を後付けするための法改正と考えた。国民がおかしいと考えたことに自民党からほとんど反対論がでなかったが、ツイッターで相次いで反論が起き、元検事総長らが記者会見して反対論を展開した。
刑事訴追されたり、辞めさせられた官僚が政権に立てつくことはあっても、職務を全うした官僚が政権に意見したことはこれまでになかった。当初、野党の反対はあっても「強行採決」する考えだった自民党は国会での議決を翌週に持ち越した。その時点で事態は「想定外」の展開を始めた。
「賭けマージャン報道」である。個人的には、黒川氏は「はめられた」感がある。賭けマージャンなどは誰でもがやっている。僕が知っている限り、公務員といえども賭けないマージャンなど誰もしない。しかし、この時期にさすがに「賭けマージャン」はまずい。わきが甘いといえば甘い。
だが、産経新聞記者の自宅で行われた「賭けマージャン」は参加した産経と朝日新聞記者しかしらない「事実」だろう。それが漏れたということは、その場にいた記者の誰かが文春にリークしたとしか考えられない。
それにしても、アベノミクスがこの時期に法案採決を強行しようとしなければ、こんな記事が文春に掲載されることもなかっただろう。アベノミクスは自ら墓穴を掘ったと言わざるを得ない。
新型コロナウイルス感染が始まり、多くの国家のリーダーは求心力を高めている。そんな中で、政権の支持率が急降下しているのは、残念なことに日本ぐらいしかない。
アベノミクスはついに自ら墓穴を掘ってしまった。検察庁の中でもはやアベノミクスを支持する人はいないだろう。これまで不起訴となった案件が再び火を噴く可能性もある。アベノミクスは辞任後の自らの立場を考え始めた方がいい。
新聞記者として多くの官僚に接してきたが、官僚OBを甘く見てはいけない。事務次官の最大の仕事は「後継者」を任命することなのだが、決断に際して少なくとも「有力OB」の了解を得るという手続きを取る。大きな政策変更にあたっても当然ながら「有力OB」に相談する。90年代のコメ市場開放に当たってもそうだった。検察庁OBを敵に回してしまったアベノミクスは官僚をなめすぎた感がある。そう思うのは新聞記者OBの僕だけではないはずだ。