2018年12月6日、水道法改正が可決、成立しました。その中に盛り込まれたのが「水道民営化」でした。政府は水道事業の運営権を民間業者に委ねるだけで、「民営化ではない」と強弁していますが、1990年代に始まった世界各地の民営化はほとんど同じ方式で始まり、多くが破綻し、公営化に戻しています。水道の民営化に関していれば、日本は周回遅れで参画したことになります。

 世界各地で失敗した水道民営化策を今になってなぜ導入しなければならないのか。興味あることに世界各地での多くの水道民営事業にヴィオリアとスエズというフランスの水会社がかかわっています。フランスでは100年も前、小さな水道会社が各地で水道事業を立ち上げたという特異な歴史を持っています。最初は地元のための小さな協同事業でしたが、時代とともに合従連衡を繰り返し、巨大な営利企業になりました。おかしなことにフランスでは水よりワインの方が安いといわれ、飲み水をボトルに入れて売る商売もフランス生まれの発想だと思っています。

 日本を含めて、多くの国では自治体が水道事業を担ってきました。蛇口からそのまま水が飲める国はそう多くありません。80年代に日本で学び、世界保健機構(WHO)の幹部となったバングラデシュのバブさんがかつて言ったことがあります。「僕の生まれた国では生水は絶対に飲めません。こんなにおいしい水がある日本でなぜ水を買うのか不思議です」。関西や東京から来たお客さんが異口同音に言うのは「高知の水はおいしい」ということです。6年前、土佐山アカデミーに参加して3カ月ほど暮らしたことがありますが、その水は高知市内よりさらにおいしかった記憶があります。おいしい水を蛇口から飲める幸せを高知の人々は感謝しなければなりません。

 今回の「水道民営化」法は公営事業としての水道を民間業者に委ねてもいいということです。自治体が「ノー」ということも可能ですが、政府はこれからアメとムチを使って各地の水道事業の民営化を進めるに違いありません。そのような補助金制度が生まれることは間違いありません。 多くの高知の人々に水道民営化について意見を聞いてきましたが、「いいじゃないか」と言う人に出会ったことはありません。みんな「おかしい」と感じているのです。国はこれまでも不都合なものを多く地方に押し付けてきました。

 そこで考え始めたのが、高知市から水道民営化に「ノー」という民意を掲げることです。市議会で民営化はしないという旗を打ち上げれば、全国の牛耳を集め、「高知市に続け」という声が上がることは確実です。高知からの発信です。「自由は土佐の山間より出ずる」と喝破したのは植木枝盛でした。自由民権運動はまさに高知で産声を上げ、国会開設にこぎつけたのです。

 はりまや橋夜学会は2015年1月に誕生し、年末に125回を数えました。小さな集会ながら、政治、経済、文化を議論しながら、これからの日本を考えてきました。メディアにも度々取り上げられ、高知大学の岡村教授の防災に関する夜学会では100人にものぼる市民がはりまは橋商店街のテントの下に集まりました。 そのはりまや橋から「水道民営化にノー」の訴えを全国に広げて生きたいと思います。若い人も年配者も水だけには敏感です。水は生存に欠かせないものだからです。