「吉里吉里人」にみる独立国家の世界 夜学会103
10月12日(金)の夜学会のテーマは「吉里吉里人にみる独立の世界」です。時間は午後7時から。場所ははりまや橋商店街イベント広場。
40年も以上前のこと、井上ひさしは「吉里吉里人」という長編小説を書いた。長編ながら東北地方で起きたたった2日間の独立騒動を描いた。藤原時代、東北地方は金の宝庫だった。その当時の埋蔵金があることを前提に、金兌換性を持つ通貨イエンの強みを基礎に、エネルギーと食糧の自給自足が成り立つならば、どんな地域も国家から離脱して思い思いの国を作ることが出来ることを示したかったに違いない。以前、国家とは何かというテーマで夜学会を行ったことがある。国とは国境で、隣の国が承認してくれれば、もはや国家は成り立つ。吉里吉里人の背景にはひょっこりひょうたん島があるのだ。こちらは動く国家である。
ある朝、人口4000人の吉里吉里村は日本国から独立を宣言した。旅人は突然、パスポートの提示を求められ、外国人は外国人登録所への出頭を求められた。この吉里吉里国の住民以外は日本人も含めてすべて外国人となってしまった。円は使えず、イエンへの交換を求められた。
イエンは金兌換券である。吉里吉里国の面白みは1971年のアメリカによるドルから金への兌換停止に対するパロディから始まる。藤原三代の時代の埋蔵金伝説が小説上で真実となったことから吉里吉里国の攻勢が始まる。裕福な国家は国民から税金を取る必要がなくなった。つまり非課税国家である。それを知った名だたる世界の多国籍企業が相次いで吉里吉里国に法人を設立する。独立以来、イエンの相場は2日で5倍にもなる。
日本国は自衛隊を国境に待機させたが、何百もの多国籍企業が登記を終わらせると、手も足も出せなくなる。 吉里吉里村はもともと農村地帯であるから食糧は自給できる。大型の地熱発電所もあったからエネルギーには一切困らない。もちろん北上川に接しているから水にも困らない。食い物と水とエネルギーさえあれば、だれでも自活できる。
吉里吉里国にはどこの国にもないユニークは発想がある。まず国会。議事堂は建物ではない。動く村内循環バスの中で議会が開催される。閣僚も議員もバスに乗車しているから、国内の動きは手に取るように分かる。そもそも人口4000人だからほとんどが知り合いなのである。
空港はない。しかし北上川に流れる大きな湖が国際空港となっている。つまり水上飛行艇が国際便も離発着できるようになっている。
この国の国立病院はノーベル賞クラスの医師が世界中から集まっていて、世界最先端の医療技術を誇る。看護婦長はナイチンゲール賞を3回も取ったことのある人物で、彼女を慕って優秀な看護婦が世界各地からやってくる。もちろん治療費は高額だが、金持ちから多くとる発想を持っている。治療費は年収の4分の1という発想も面白い。
この病院のもう一つの顔は臓器移植である。脳死状態の臓器を永久保存させる技術を確立させ、それを保存させてあり、ありとあらゆる臓器移植に対応できるようになっている。