「委縮する日本 忖度の連鎖・ウソの連鎖」
時間:6月1日(金)午後7時
場所:イベント広場
講師:伴武澄


 学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却を巡る一連の問題で、大阪地検特捜部は31日、前国税庁長官の佐川宣寿氏(60)や財務省職員らを不起訴処分にしたと発表した。決裁文書を改ざんした虚偽公文書作成や、国有地を不当に安く売却したとする背任容疑などで告発状が出されていたが、特捜部は佐川氏らの刑事責任は問えないと判断した。(6月1日付け毎日新聞)
森友学園の土地取引には誰が見ても首相夫人の関与が疑われている。
加計学園の特区承認をめぐっては首相本人の関与が疑われている。
それを頭からないことにしようというのが首相と官邸周辺の動きである。
「李下に冠を正さず」という中国の有名なことわざがある。「スモモの木の下で冠をかぶりなおそうとして手を上げると、実を盗むのかと疑われるから、そこでは直すべきではないという意の、古楽府「君子行」から」、人から疑いをかけられるような行いは避けるべきであるということのたとえである。
「李下」はかつて安倍首相も国会で言及したことわざである。
 首相は「私が実を取ったわけではない」と申し開いた。犯罪を構成しなければいい。そんな響きを持つ。疑いを持たれること自体がすでに首相失格なのである。
 森友学園問題では、首相夫人の親しい籠池夫妻が「法外な値引き」という実を取った。
 加計学園問題では、首相の友人が特区で「特別の計らい」という実を取った。取っただけでない。実も食べてしまった。
 この二つは事実である。首相が実を取らなくとも、親しい夫婦と友人が実を取ったことは事実である。この実の取り方について、首相や官邸側は「公正な手続き」だったと強弁しているが、公平性を欠いたことは誰の目にも明らかである。
 官僚たちは森友学園がその実を取りやすいようにはしごを貸してあげていた。
 官僚たちは加計学園に実の取り方を教えてあげていた。
 公平性を欠くという批判に対して首相や官邸側は何と言ったか。
「実が腐っているかもしれないと言ったから安く売った」と説明した。
「実を欲しいといったのは加計学園だけだった」と説明した。
 ある財務官僚は、ゴミ問題で「ゴミを搬出する5000台のトラックを見た」と森友側に言えと言った。これだけでもゴミが大量に存在しなかった大きな理由になる。
 この一年、首相はウソを言い続け、官僚たちもウソを貫き通した。ウソは上塗りされ、メディアを通して国民に伝わった。ヒットラーがかつて言った有名な言葉がある。『嘘を大声で、充分に時間を費やして語れば、人はそれを信じるようになる』。そうか、国家のうそをついてもいいのだ。国民を騙しても支持率があれば、なんら咎められるものではないのだ。首相は「大衆の多くは無知で愚かである」と影でほくそ笑んでいるのかもしれない。でも安倍晋三ってそんなに気丈な男には見えないのだが。
 森友・加計問題が投げかける問題は安倍晋三の進退といった小さな問題ではない。霞ヶ関の人事権を握った官邸によって、誰も真実を語ろうとしなくなった。日本の将来に真っ黒な雲が掛かっているこの自体をなんとか打破しなければならない。