2005年01月08日(土)
萬晩報主宰 伴 武澄

 燃料電池車の開発が最終段階に入っている。自動車のエンジンをばかにしてはいけない。カローラクラスで100馬力のエンジンは当たり前だが、馬力を電力に換算すると約75キロワット。

 1・5トンの車体を自在にあやつるにはそれだけの馬力が必要だということだが、平均的家庭の電力が3キロワットといわれているから、1台の乗用車が民家25件分の発電能力を持っているということでもある。

 仮定の話だが、日本には自動車が8000万台ある。それぞれが25件分の発電能力を持っているとすれば、掛け算で20億件分ということになる。これはす ごいことなのだ。現在、日本人が保有する自動車だけで、日本の10社の電力会社の総発電能力をすでにかるく上回っている。  自動車はエンジンを回して発電機を回さなければ電気は生まれないが、燃料電池車の場合は燃料電池そのものが「発電機」だから、これを家庭や職場の電源につなげるとまさにほとんどの国でエネルギー問題は解決する。そんな潜在力を持っていることを知らなければならない。

 このアイデアは小生だけのものではない。文明評論家のジェレミー・リフキンが書いた『水素エネルギー ハイドロジェン・エネルギー・ウェブ(HEW)』(2003年、NHK出版)の中にすでにある。

 孫引きだが、財山法人道路新産業開発機構が発行する『季刊・道路新産業』によるとその構想は次のようなものである。

「水素を燃料とする燃料電池は、個人が自分のために利用できるばかりでなく、送電線を通じて、余剰の電力を他社に提供できるミニ発電所である。化石燃料時 代のエネルギーの流れが中央集権的で一方的であったのに対して、水素エネルギーの時代にはエネルギーの流れは双方向になる。分散型で双方向である点におい て、燃料電池のネットワークはインターネットのウェブと全く同じである」

「分散型発電設備の中で興味深いのは車である。リフキンによれば、一般に乗用車は一日の96%は駐車している。その時間を利用して、家庭やオフィス、商業 用の双方向電力ネットワークにつなげば、電力ネットワークに、無公害の高品質の電力を供給できる。電気を売った収入は車のリーズ料や購入費用にあてること ができる」

 ここまで聞いて単なる傍観者でいられるだろうか。このHEW構想によって筆者は持論の「直流ハウスによるエネルギー革命」にますます自信を深めざるをえない。

 燃料電池ではないが、トヨタのハイブリッド車であるプリウスやエスティマには家庭用の100ボルト交流を取り出せる差し込みプラグが備わっているのをご 存じだろうか。 電力会社を刺激しないようあえて大きく宣伝はしていないが、トヨタはすでに自動車を家庭用電源として使える構想を進めているのだ。(続)