7月10日(金)のテーマは「臨時暫定特定国家」です。法律の根本をたださずに「とりあえず」の形で対応してきた霞ヶ関政治体質について話をします。お楽しみに。

暫定税率がいかがわしい4つの理由 伴 武澄 (2009年2月 5日)

 ガソリン税の暫定税率をめぐる第一ラウンドは、自民党が暫定措置を5月末まで延長する「つなぎ法案」を提出、1月中に衆院で可決しようとしたこと。衆参議長による調停で、本年度内に参院で採決することを条件に自民党はつなぎ法案を取り下げた。

 第二ラウンドはどうなるのか。たぶん①法案に盛り込まれた延長期間10年の短縮②上乗せ税率幅の低減③ガソリン税の本則を改定する―などの論点をめぐって与野党間の熱い議論が展開されるのだろうと思う。

 ガソリン税など暫定税率の問題で筆者がいかがわしいと考えていることを述べたい。

 第一に暫定の期間が長すぎる。最初にガソリン税などに暫定税率が導入されたのは昭和49年。1974年のことである。石油ショックにより道路財源が確保 できないことから当初2年だけ多く負担してくださいというのが趣旨だった。それが3年、5年の延長、延長でここまでやってきた。今回の延長は10年だから 何をかいわんやである。

 暫定期間が34年ということは3年後に定年を迎える筆者が働いてきた年月に匹敵するからすごい。30年以上にもわたり”暫定”はないないだろう。

 10年以上も前に共同通信の経済部の記者時代からこの問題を記事に書いてきたが、当時でさえ「15年もの暫定はないだろう」と問題提起した。しかし”暫 定”問題に関心を示していたのは石油業界だけであった。本当に必要な税率だとするならば本則を改正すればいいことである。そんなに難しいこととも思えな い。

 第二に暫定税率が高すぎることがある。ここ数年ガソリンそのものが高騰しているが、長い間、製品価格に対して100%以上の課税が続いていたのである。こんな税率はタバコしかない。

 第三は自動車関連だけに暫定税率がかけられていることである。ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税などである。30年前なら自動車は”贅沢品”の一つ として重課税があってもおかしくない。だが、自動車を持つことが富の象徴でもなんでもなくなった時代になっても自動車に重課税することは税の公平性からみ ておかしい。国際的にみて自動車オーナーにこんなに税負担がある国はないはずだ。本則を改正しようとすると必ずこういった議論が起きるから政府はなんとか 暫定措置の延長で税収減をかわしたいのだと考えざるを得ない。

 第四におかしいのは自動車関連の税金が道路特定財源となっていることである。自動車に乗る人たちが道路建設の負担をするのは当然のことと思われた時代も あった。しかし、発想は昭和20年代のものである。田中角栄議員が同29年に議員立法で成立させた法律である。当時は、高速道路などはなく、国道1号線で さえ、十分に舗装されていなかったのだから悪くない発想だったに違いない。ちなみに高速道路を有料にしたのも田中角栄氏だった。

 全国に道路を整備することはまさに地方への公共事業予算の確保にほかならなかった。連想ゲームのように「暫定税率」は「道路特定財源」という自民党の政権維持のための資金源へとつながる。これを断ち切るのが改革でなくてなんであろう。

 政府・与党にとって暫定税率が日切れとなるのは悪夢であろう。しかし、たとえ1日であってもガソリン税が本則に戻ることは国民にとって大きなショック療法となる。暫定税率といういかがわしい制度がこれほどまで続いてきた意味について考えるきっかけになるだろうからだ。