安倍晋三首相が11月18日記者会見し、来年10月からの消費税増税を延期し、衆院を解散すると発表した。解散に対して世の中の多くが「合点がいかん」と思っているはずだ。
 かつて小泉純一郎首相は郵政民営化法案が否決されて「民意を問う」と衆院を解散したことを思う出す。内閣の方針に国会が「ノー」を突きつけた。たぶん国民は俺を支持してくれるだろうという強い意思表示があり、選挙結果は小泉首相の思う通りになった。
 今回、消費税増税の延期に対して反対はほとんどなかった。野党もほどんど支持している。「安倍さんの消費税増税延期に反対している人はほとんどいないのに”国民の意思”を問う必要などない」。国民が合点のいかないところはまさにこの一点にあるのだろうと思う。
 経済情勢などに関係なく予定通り増税を進めようとした財務省に対して安倍さんがキレたという話も出ている。僕は、民主党の野田政権の時から官邸は財務省主 導に戻ったと思っている。官僚のシナリオ通りに政治を演じていれば、かつての自民党のようにつつがなく政治が回る。口には出さなくとも誰もが知っているこ とである。
 アベノミクスなど官邸主導の経済政策だと考えている人はいない。いまさら財務省にキレたといわれても・・・。
 僕が言いたいのは消費税増税はすでに過去の議論でしかないということだ。「合点のいかない」解散総選挙の争点にするにはあまりにも陳腐だ。陳腐の上塗りでしかない。
 僕が野党のリーダーだったら「原発再開の是非」を争点にする。福島原発の事故は日本の将来にとって、否世界の未来にとってとんでもない衝撃を与えたはずである。僕自身、消極的な原発推進から絶対反対に転向するきっかけとなった。
 前の民主党政権は2030年を目指した脱原発政策を打ち出した。原発なしでは経済が立ちゆかないとされた日本のエネルギー事情は、ここ数年、原発なしでちゃんと回ることが実証された。太陽光を中心に自然エネルギーへの投資意欲はかつてない高まりをみせている。
 ここで日本のエネルギー政策の大転換を図らなければ、次の原発事故が起こる。その時では遅い。「原発復活の安倍政権vs脱原発の野党」という構図ならば、解散総選挙の大きな争点となり得る。
 賽は振られた。分裂を続ける野党が一致できるのは「脱原発」しかない。そんな「合点のいく」選挙となってほしい。