財団法人国際平和協会は3月7日、青森県平川市で「Think Asia-先人たちが築いた絆を求めて」と題したフォーラムを開催した。共催は地元の高齢者ケアを行う社会福祉法人緑風会という異次元の組み合わせ。その夜、平川市の老人ホームは台湾と日本をつなぐ国際的雰囲気に包まれ、地元新聞記者も取材に訪れた。
 台北駐日経済文化代表処の政務部長である周学佑氏が地域が国際的交流を深める意義を説き、小生は烏山頭ダムを築いて台南の人々から今も慕われる八田與一の話をした。
 ことの起こりは昨年9月、国際平和協会が主催した台湾視察旅行に緑風会の役員や職員が参加したことだった、このことは以前にも触れたことがあるが、彼等が台湾で経験したことを地元の人たちや他の職員にも広めたいとの強い希望があり、地吹雪が吹き荒れる津軽の地でThink Asiaフォーラムの開催となった。
 フォーラムには平川市長に当選したばかりの長尾忠行さんや弘前市副市長の蝦名正樹さんも駆けつけた。たまたまではあるが、周部長の奥さんが平川市に隣接する黒石市の出身だったこともあり、会場には津軽一帯から多くの参加者があった。
  津軽は明治初期に開明的な日本人を数多く生んだところとして知られる。ジャーナリストの草分けの一人陸羯南があり、孫文革命の初期に広東省恵州で命を絶っ た山田良政は津軽どころか日本という枠を飛び出しアジアの開放のために尽くした。弘前市の貞昌寺には山田に送った孫文の碑文が残り、周部長は翌日、その石 碑の前で花を捧げた。
 津軽と台湾をつなぐのは孫文革命だけではない。津軽リンゴは台湾で最も多く販売されており、経済面でもつながりも決して小さくない。今回のフォーラムはさらに文化面で人の交流を広げる大きなきっかけになるとの評価もいただいた。
 Think Asia津軽フォーラムのパンフレットにわれわれは次のような文章をのせた。

 東アジアをめぐる政治情勢がこの上もなく緊迫しています。この地域に平和と安定を求めるため、先人たちの残した絆をもう一度再構築することが最重要課題だと感じています。私たちはそれを「アジアの意思」(Think Asia)と呼んでいます。
 2013年9月私たちは台湾を旅しました。高齢者施設や少年鑑別所など普通の日本人が訪ねることのないところを多く視察し、「先人たちの築いてきた絆」を再確認して来ました。
  なぜ津軽なのか・・・、それは混迷するアジア情勢のなかで発信力を備えた有為な人材への期待を津軽の教育と人々の躍動にみたからです。最近の積極的な独自 のアジア外交や、内においては真摯な教育への取り組み、そして津軽文化への前向きな継承など、全国津々浦々における地域や自治体の魁となるモデルケースと して、かつ地域住民の誇りとして、ときに忘れがちなことや、行動への戸惑いについて、人々の在り様を再度想い起す機会として提案するものです。津軽のみな さまにも私たちの体験を共有してもらい、Think Asiaの共感を広げたてもらいたいと思います。

 先人たちの残した絆を大切に育て上げるには後生の人たちの仕事である。そんな自覚から平和運動の地平線も各地に広げられる。そんな思いがした3日間だった。国際平和協会の津軽支部をつくろうという機運も高まっているから嬉しい。(国際平和協会会長・伴 武澄)