円安が容認されるのは日本が脅威でなくなった証?
お金を市中に多く流せば、企業が設備投資をして経済が活性化される。経済学の初歩である。アベノミクスは昨年来、空前の資金供給を行ってきた。経済実態以上に中央銀行がお金を印刷すれば、通貨の価値が下がるのもわかりやすい。
この一年余、日本経済は急激な円安に恵まれ、企業業績は急速に拡大、株価も急上昇した。海外での売上高が円ベースでふくれた結果である。しかしながら、足下では企業の輸出が増えたわけではない。国内での設備投資が活性化したわけでもない。経済実態は何も変わっていないのに、この変わりようなのである。
かつて、日本が円安誘導をしようと思ってもままならなかった。プラザ合意以来に日本の円高は日本の輸出競争力をそぐことに主な目的があった。主要国の圧力をバックに国際金融資本は円高に誘導してきた。過去に日銀が資金の大規模な流動性拡大を図ったときも、さして円安に誘導することはできなかった。背景に主要国の圧力があったからだろうと思っている。
それが安倍政権になったとたんに、円安が進行したのはどういうわけであろうか。日本経済が世界の脅威でなくなった証といっては言い過ぎだろうか。
あるいは、主要国が陥りつつあるデフレ経済から日本がどう脱却するかアベノミクスに対してお手並み拝見とばかりに静観しているからなのだろうか。
ここ20年、グローバル化した世界経済が陥っている罠は国家が窮乏して企業が繁栄する図式である。どの企業は有り余る資金をどうするか。日本企業をみる限 り、手をこまねいているのが実情である。お金が余って仕方がない。多くの企業の余剰資金は国の借金である国債の購入に回っているはずである。それでは株価純資産倍率(PBR)ばかりがどんどん下がってしまうのだ。
一年間前の3月末の企業の現預金が225兆円とGDPのほぼ50%に達していることが分かっている。もちろん借入金もあるからすべてが企業の自由になる金 ではない。しかし、この現預金がこの一年どれだけ積みまされたたのか興味があるところである。日銀がいくら市中に資金を供給しても大企業は決して資金の借 り手にはならないだろうということである。
結果的にアベノミクスは円安誘導と国債の低利安定だけのためにあったことになる。そんな気がしてならない。日銀がお金を刷って円安誘導できるということはやはり、円という通貨の神通力がなくなった証なのだろう。