3 ジョン・レノンの「イマジン」
 今年の3月20日はイラク戦争開戦10周年であった。独裁者サダム・フセインは殺されたが、イラクは安定からはいまだほど遠い。今でも各地でテロが続いている。イラク戦争はなぜ戦われなければならなかったのか、世界に何をもたらしたのか、その検証がなされなければ、同じような悲惨な戦争がまた繰り返されることになるだろう。
 独仏とは違って、日本は大義名分が怪しいこの戦争を支持したが、支持に至った過程の検証はまったく不十分である。
 参考:浜地道雄 又々驚愕!「イラク戦争支持検証」議論開示せず
http://www.janjanblog.com/archives/87712
 さて、イラク戦争開始直前の2月1日に、スペースシャトル・コロンビア号の空中分解という衝撃的な事故が起こった。私はこの事故に「戦争をするな」という宇宙の意志を感じ、
「宇宙からのメッセージに耳を傾けよ――スペースシャトル事故と迫り来るイラク攻撃」
http://nakazawahideo.web.fc2.com/others/iraqwar.htm
という論文を書いた。
 この論文では、事故で亡くなったアメリカの宇宙飛行士ウィリアム・マックール氏が、ジョン・レノンの「イマジン」を起床音楽として希望し、その歌詞を引用することによって、間近に迫ったアメリカのイラク攻撃に反対の意志を表明していたのではないか、という推測を述べた。
 そして萬晩報2003年03月04日の
宇宙飛行士の言葉はなぜインターネット上にないのか
http://www.yorozubp.com/0303/030304.htm
で、その推測が正しかったことを確認した。その当時のアメリカでは、「イマジン」は放送禁止曲扱いになっていたのである。
 「宇宙からのメッセージに耳を傾けよ」を英訳し、インターネット上に発表したところ、海外からも多くの賛同のメールをもらった。
 その中に、ドイツの友人ヴィルフリート・フィンク氏からのメールがあった。このメールの内容は英語エッセイではすでに紹介している。

Why Are William McCool’s Words not Found on News Sites? Supplement to “Message from Space”
http://nakazawahideo.web.fc2.com/others/message2.htm

 この萬晩報エッセイではフィンク氏の言葉を日本語でも紹介しておこう。フィンク氏の2003年2月22日のメール(原文英語)――
《私は(2002年)のクリスマスに、深い夢のメッセージを受け取りました。
 7羽のカラスが地球の周りを飛んでいました。私は彼らの意識の中に同時に入ることができて、14の目で同時に地球の見事な光景を眺めることができました。彼らは私に、私たちの星がいかに素晴らしいか、そしてすべてが完全であるか、を示してくれました。
 そうですね、おそらくイラクでは戦争になるでしょう。多くの苦難と不安恐怖が起こるでしょう。しかし、すべての人はまさにその人に必要なレッスンを学ぶのです。
 最後に、カラスはピアノの黒い音符に姿を変えました。そこで、メッセージはいっそう明瞭になりました――白い音符だけでは誰も演奏できません。音符のすべてを体験するためには、私たちは白と黒の存在を承認しなければならないのです・・・》
 驚くべき予知夢であると思う。私の夢解釈はフィンク氏自身のそれとは若干違う。「7羽のカラス」がコロンビア号の7人の宇宙飛行士であることは言うまでもない。彼らは、宇宙から息をのむまでに美しい地球の姿を眺め、地球のかけがえのなさを伝えてくれる。夢の最後にカラスが黒い音符に姿を変えるのは、コロンビア号の空中分解事故を予兆している。だが、それは無駄な死に終わるのではない。それは美しいピアノ音楽となって、人類に平和のメッセージを伝えるのである。この音楽はジョン・レノンの「イマジン」と結びついている(「イマジン」の伴奏はピアノだ)。しかし残念ながら、宇宙飛行士らの命と引き替えのメッセージは、戦争へといきり立つアメリカ人には届かなかった。
 BBCの「あなたが選んだ世界を変えた20の歌」の最後に「イマジン」が取り上げられている。この曲を選んだインド・パキスタン系アメリカ人投稿者は、「イマジン」は今でも「戦争、飢餓、宗教に関する対話を励ます曲」だと評価している。
 「イマジン」を踏まえたマックール宇宙飛行士の言葉は、イラク戦争当時には隠蔽されていたが、今ではWikipediaにも掲載されている。
http://en.wikipedia.org/wiki/William_C._McCool (Quote)
 スペースシャトルからのマックール氏の音声は、彼の言葉をヘブライ語に通訳したイスラエル人宇宙飛行士ラモン氏の音声、そして「イマジン」の曲とともに、NASAのサイトにもアップされている。
http://spaceflight.nasa.gov/gallery/audio/shuttle/sts-107/wave/fd15blue.wav
《私たちがいる周回軌道上という眺望のよい地点からは、国境がなく、平和と、美と、壮麗さに満ちた地球の姿が見えます。そして私たちは、人類が一つの全体となって、私たちがいま見ているように、国境のない世界を想像(イマジン)し、平和の中で一つになって生きるように努力することを祈ります。》
 「イマジン」を聞く時、私はいつもマックール氏の言葉を思い出す。
 
中澤英雄のホームページ:http://nakazawahideo.web.fc2.com/