14日、アカデミー生は堪ちゃんに率いられて市内はりまや橋商店街の金曜市に「炭屋」を出店した。午前中、西岡燃料の西岡謙一さんから「炭」について簡単な講義を受けて、いざ商い。1時間ごとに交代で露天に立った。僕は午後1時からキムと2人で売り子となった。
 西岡さんに言わせると大量生産大量販売以外にも売り方があるという。商品に物語性をつければいいのだとも言われた。西岡さんはこのところ土佐木炭の販売に力を入れている。高知県の山を元気づけるために「84プロジェクト」というNPOもやっている。自分のところで売る木炭に「84マーク」をつけ、ファンドレイジングの一環として寄付金付きで売り出したところ「けっこう売れるのだ」という。
 商いの原点は「対話」。話を聞いてよかったとなると買ってくれる。商品+アルファである。いま売り方は「競争」から「共感」に移行しているというのが西岡さんの考え。この日の僕のいでたちは雪駄履きに薄茶色のジャケット。まさに寅さんの心境になって来る。
「商売というのは売れても売れなくてもドキドキする。売れたらもちろん嬉しい」
「近江商人の格言として、相手を知り自分を知り、世間を知るというのがある」
「土佐弁でずるい人のことをへこまんという。でも真面目な人が緩やかにつながったら勝つかもしれん」
 最初は「土佐山で僕たちが焼いた炭はいかがですか」などと呼び込みをやっていたが、考え直した。形のいい丸い切り炭を売るに当たって、そこらへんに生えていた草花をいくつか切ってきていたので、実演に移った。
「おばちゃん、こうやってすすきの葉をさすときれいでしょ」と問いかけると、3人に1人は興味を示してくれる。そこから客との対話が始まるのだ。一番多く買ってくれたのは隣でお店を開いていたおばちゃん。5個も買ってくれた。3個かってくれたおばちゃんは「友だちにもあげたい」と言ってくれた。
 1個も買ってくれなかったおばあちゃんは「なつかしいね。私、土佐山で育ったのよ」と昔話をしばししてくれて去った。「来週も店を開くかよ」と言ってくれた客もいた。正直、嬉しい。1時間は瞬く間に終わった。
 西岡さんがいま力を入れているのは七輪と土佐木炭(6キロ)の販売。「震災で電気もガスも止まったとき、七輪と木炭があれば大丈夫」というのがキャッチコピー。6キロの炭は約30回の使用だから最低での10日の煮炊きができる。「高知県に10万世帯ある。ということは10万セット売れる可能性がある。売れれば町の人は安心を買うことになり、山の人には炭というなりわいを増やすことになる」のだ。
 まっことよう分かった。僕たちの金曜市での商いは1万4400円となった。西岡さんも「よう売れたね」とほめてくれた。堪ちゃんは「こればぁ売れるのなら毎週売りに来ようかな」と欲を出していた。
 受講生の1人、高田さんはおもしろいことをFBに書いてくれていた。
「高知での人との繋がり方はとてもドラマティックでスピーディーだと感じた。自分がどうこうではなく、水が高い所から低い所へ流れるようにただナチュラルに。ただ起こった事をそういうものだと感じることにしよう。そういうものなのだ」
「はりまや橋アーケードすごくやわらかい雰囲気の商店街。通行人も出店者とコトバを交わすことをナチュラルに楽しんでいるように感じた。この見えない暗黙の了解にも似たような粋というかアーバンというか。そういうエリアなのだと思った。悪くない」
「高川の山で切った木を高川の炭焼き小屋で焼いて、切って、売った。都会で炭に火を着けた時土佐山を感じた。何故か山に戻りたい気分になった。炭は山と繋がるアイテム。炭に火を入れる瞬間、山と繋がる。それは自分が体験したからでこそ」