賀川豊彦の伝記を書いたことでも著名なアメリカのロバート・シルジェン氏の講演を昨日、徳島市まで聞きに行った。この人は全米最大の生協だったバークレー生協の広報誌の編集長だったが、現在は環境問題を取り扱うSierra Clubの機関誌編集長である。
 賀川豊彦の縁で、2012国際協同組合年のイベントとして招聘され、東京、神戸、徳島で「環境・エネルギー問題と協同組合」と題して連続講演した。
 かつては生活者のために協同する組織だった協同組合はいまこそ「環境とエネルギー問題」で力を合わせなければならないことを強調した。
 シルジェン氏は「アメリカはすでに化石燃料の確保のためにイラクで戦争をしてしまった。決してイラク国民の解放のためではなかった」と断言し、「第二次大戦すら日本とドイツがエネルギー確保のために始まった」と述べた。
 賀川豊彦の『Brotherhood Economics』(友愛の政治経済学)については「いまこそ読まれる本である」「日本語訳が最近ようやく出版されたことを日本に来て知って驚いた。もともとアメリカで協同組合運動を広めるために船中で書いた」「1930年代に世界経済が破綻したとき、資本主義でもない、共産主義でもない第三の道を模索した」「Brotherhoodというクリスチャンの教えを実践に移そうとした」などと高く評価した。
 協同組合の第一にやるべきことは「Save Energyの教育だ」と強調。「省エネを第5のエネルギー源と位置付けるべき、20%の省エネをやった友人がいる。できるということである。日本の原子力の依存度が26%であると聞いている。20%の削減は原発の発電量に相当する」。とした。
次いで「再生可能エネルギーの啓蒙」が不可欠だとした。アメリカのBasin Electric Powerという協同組合はノースダコダ州を中心に中西部136の会員協同組合を通じて280万人の消費者に電気を供給している。10%は再生可能エネルギーであり、大半は風力から調達していることを紹介した。
 興味深かったのはSierra Clubの「Carbon Offset」という活動だった。「航空機で移動したとき、その距離で輩出する二酸化炭素量に応じて運賃を余分に支払い、スマトラの水力発電やインドでの廃棄物発電の資金にしてもらおうという運動だ。みんなに強要するのではないが、支払いたいという人は決して少なくないのだ」という。
 エネルギー問題は「退屈なのだが、エキサイティングでなければならない。楽しみや娯楽にしよう。コンペがあってもいい」という提言にはうなずかされた。