100年前、大石誠之助という医者が熊野の新宮にいた。苦労してアメリカで医者になり、故郷に戻った。貧乏人から金を取らない医者だったが、大逆事件に連座して絞首刑となった。そのもの語りを書いた辻原登の小説『許されざる者』の上巻を読んだ。いま下巻を注文中である。当時、新宮には汽車も通っていなかったが、新聞は二つもあった。世界の最新情報が紀伊半島の南端に届いていたという設定である。 小説には西本願寺の法主となる大谷光瑞と思える人物、阪急電鉄を創設した小林一三とおぼしき人物も登場する。ロシアが支配していた満州で馬賊のような活躍をした石光真清は実名で登場する。 毎日新聞に連載された小説だが、当時、読んでいなかったのが残念である。薦めてくれた妻の妹にに感謝している。