民主党の消費税引き上げ法案の議論が迷走している。民主党が法案を了承したとしても連立を組む国民新党は引き上げに反対であるし、閣議決定して国会に上 程されたとしても法案の成立はおぼつかない。消費税引き上げについていくつもの「なぜ」がつきまとう。一番大きな「なぜ」は東日本大震災からの復興、そし て放射能の問題が国全体を揺るがしているその時に、なぜあえて大きな争点を政治に持ち込もうとするのかという疑問である。
 復興に必要だ とされる財源についてはすでに所得税と法人税の暫定的引き上げが決まっている。消費税増税は復興とは関連がない。あわてる必要はない。民主党が引き上げを 提起したのは、社会保障費の財源だった。迷走するのは財政全体の問題となったり、社会保障費の問題となったりと議論が行き来するからである。財務省がもく ろむのは財政の立て直しであって、社会保障という一部の問題ではない。極論すれば官僚制度を維持するための財源確保といっていいもかもしれない。
 ショック・ドクトリンというものがあるそうだ。戦争や自然災害など人々が茫然自失である状態で、国民にありがたくない政策を矢継ぎ早に導入していく手法をいうのだそうだ。消費税引き上げはまさにショック・ドクトリンの典型だ。
 その「なぜ」ではないが、今回の消費税引き上げ法案には巧妙なからくりが組み込まれている。消費税引き上げ反対の勢力に「条件闘争」をさせるためのからくりである。まず法案に盛り込まれた「追加増税規定」である。
  二段階で消費税を10%に引き上げたとしても財政は健全化しないため、さらなる増税が必要だと法案に書き込んだ。だれもが驚いたであろう。心情として「そ れだけはやめて」となり、論点は引き上げの是非から、その先の再引き上げへと移ってしまう。これは結果的に「引き上げ容認」をもたらす効果をもたらした。 民主党の議論でもそうなった。
 執行部が妥協するのは、再引き上げに関わるその文言である。「平成16年後をめどに」が「法律尾公布後5年をめどに」と修正された。その後、メディアの報道の中で「引き上げ絶対反対」の論議は影をひそめ、修正案のありかたに焦点があてられるようになる。
 メディアは本質的に、本質的議論より、新たな提案や妥協に新しさを求め、常のその落としどころを求めていく習性がある。そして「景気弾力条項」が登場し、さらに「歳入庁の設置」のなど消費税引き上げに伴う周辺整備のあり方に議論が進む。
  うらでほくそ笑んでいるのは、財務相に違いない。シナリオ通りに民主党もメディアも関心を移していって「いまなぜ増税なのか」という本質的議論に戻ること はない。萬晩報はあえて言いたい。現政権の喫緊の課題は復興と原発問題である。消費税引き上げにエネルギーを消費している場合でないと。