価格ドットコムでBMW320iの国内販売価格を調べたら、436万円。アメリカでの価格はどうなっているか調べたらなんと33150ドル。1ドル=80円で換算すると265万円。日本の価格の4割も安く買えるのである。
 多少のスペックの違いはあるだろうが、265万円では日本では2000ccの乗用車さえ買えない価格帯である。日本では「外車」販売はいまでもとてもおいしいマーケットなのである。
 筆者は1994年に「外車」の国内販売価格が法外に高いという調査報道をしたことがある。中日新聞は一面で筆者の記事を掲載してくれたが、その記事は少 々波紋を起こした。メルセデスを販売していた長野のディーラーは「誤報」として提訴すると息巻き、筆者の上司だった部長殿は烈火のごとく怒り出した。
 ベンツC200の価格差が150万円以上あると報道したのであるが、実は筆者が調べたドイツでの価格には同国の付加価値税19%が含まれていたから「誤報」だとしたら、価格差はさらに大きなものだったのである。
 問題は自動車に関しては20年近くたっても内外価格差は一向に改善していないことである。
 当時、「ベンツを1台売ったら販売員は50万円の手数料を手にする」といわれていた。ベンツの販売員は月1台ベンツを売れば生活ができたため、為替に連 動させてベンツを安く売る発想はまったくなかった。ないどころか、ベンツの購入層もステータスだけでベンツに乗っていたから、安いベンツよりも高いベンツ を好むという奇妙な風習があった。
 ベンツがクラウンより安い価格で販売されれば、やがてベンツの価値はなくなるとさえいわれた。
 たかが外車の価格だったら大した問題ではない。円高になっても海外での日本車の価格が値上げされたというニュースは聞いたことがない。問題は日本人が日本のメーカーの自動車をアメリカ人より何割も割高で買わされているということなのである。
 昨年末、ニッサンの電気自動車「リーフ」の販売が話題になった。このときも筆者はリーフの日米での販売価格を調べたことがある。日本で376万円のリー フがアメリカでは3万2780ドル(306万円、1ドル=93円40銭当時)だった。当時でも2割ほど安かったが、現在の1ドル=80円で換算すると、259万円となる。
 為替がいつまでも1ドル=80円を維持するかは分からない。しかし最近の決算発表で1ドル=80円近辺とする企業が趨勢となっている。円高で輸出企業の 経営環境は確かに厳しいかもしれない。しかし、海外での販売を維持するために内外の価格差が3割もあっていいはずがない。