セルジュ・ミッシェル、ミッシェル・ブーレ共著の「アフリカを食い荒らす中国」という刺激的なタイトルの本を読んだ。フランス語では「シノフリーク」、「中華アフリカ」とでもいうらしい。一時いわれたジャパメリカみたいな表現だ。
 中国勢のアフリカ進出については、断片的な知識はあったが、この本を読んで、その規模の大きさ、ダイナミズムに圧倒された。
 アフリカでの中国は豊かさと貧しさをともに持つがゆえの強さが、遺憾なく発揮されている。豊かさが持つ資金力、そして食うためには地球の果てまでも出稼ぎにゆくという貧しさである。
 現在、中国はアフリカの資源開発の見返りとして、多くの巨大プロジェクトへの協力を実行している。すざましいのは、労働力さえも中国から輸出する様である。アフリカの労働者と変わらない賃金で何万人もの中国人労働者が海を渡っている。1世紀以上も前に、アフリカ人奴隷に変わって中国人クーリーがアメリカの鉄道工事に、オーストラリアの金鉱にと世界中に売られていった。世界中の華僑社会はその子孫たちによって築かれている。
 クーリー時代に次ぐ第二世代目の大量移動が始まったとみていいのかもしれない。アフリカにはすでに80万人の中国人がいるのだというからすごい。むかしからある南アフリカの華僑社会が20ー30万人というから、差し引いて50万人もの中国人が産業もなにもなかったアフリカに渡っているのだ。在日中国人は50万人といわれるが、日本は巨大な産業立国なのである。
 その50万人の中国人たちがまさに今もアフリカで生業を創造しているのだと考えるとそれだけで大きなインパクトであるはずだ。欧米人もアフリカに権益を求めてきたが、少数の欧米人がアフリカ人の上に君臨するかたちで「統治」してきた。中国人の場合は売春婦までもが数百人単位で各都市に進出しているのだから、その存在感は目を見張るものがある。
 中国人たちはすでにアフリカの環境を破壊しつつあることも事実である。コンゴーの国立公園内で樹齢100年以上の熱帯雨林が伐採され続けている。しかし数十年前に日本人がボルネオの熱帯樹林を裸にしてきたという歴史がある。
 アフリカに進出した中国企業が現地労働者を人間扱いしないことから、さまざまな問題を起こし、反中国感情の高まりも相当でてきているという。しかし数十年前、東南アジアで反日暴動が起きた事実も思い起こしてほしい。
 日本は環境破壊も現地の反発も乗り越えた。アジアの経済的発展は結局、製造業の進出による技術伝播、労働者の生活向上、多くの要素がスパイラル状に影響しあってもたらされたことは間違いない。
 日本の経済進出がアジアに豊かさをもたらしたのだが、それはあくまで結果論でしかない。日本企業はアジアを豊かにしようとして進出したのではない。安い労働力を求めたにすぎない。だから恩を売るような言い方をしてはいけない。
 しかし、受け入れ国側もまた、中国に反発するあまり中国資本の撤退を招いたのでは元も子もない。成長の波に乗るまでは我慢が不可欠であろう。(伴 武澄)