鳩山由紀夫氏が民主党代表に選出された翌日の5月17日、賀川豊彦献身100年記念事業の一環として、千葉大学、公共哲学ネットワークなどが「新時代の 友愛と公共知識人」と題してシンポジウムを開催した。筆者も「今なぜ賀川豊彦なのか」と題して講演した。くしくも「友愛」がキーワードとなった。愛」がキーワードとなった。
 民主党の代表選は小沢前代表の突然の辞任に伴うもので急遽、スケジュールが入ったもの。われわれの日程は2月に決まっていた。シンポジウムのタイトルに「友愛」を入れたのはその時で、小林正弥教授らによる発題である。
 http://www.kagawa100.com/schedule/090517symposium.htm
 たまたま、民主党のある幹部もシンポジウムに参加していて、その晩の懇親会では「友愛」で大いに盛り上がった。
「鳩山の友愛はよく分からない、10年前、中曽根さんがソフトクリームと揶揄したのもうなずける」
「鳩山一郎は、汎ヨーロッパを唱えたリヒャルト・クーデンホーフ・カレルギー伯爵の著書から友愛という概念を日本に持ち込んだのだよ。ヨーロッパを友愛で一つにしようという壮大な夢だったのだ」
「賀川の友愛はスラム街での苦労の日々から生まれたもので、やわなものではない。どちらかというと兄弟愛を多用したと思う」
「労働組合の友愛会だって、非合法だった時代に互助組織として立ち上がった歴史がある」
「高輪に友愛労働歴史館が今もある。日本の労働組合運動の発祥の地で、友愛は労組の看板だ」
「英語で友愛はフラタニティー、フランス革命の自由、平等、博愛(友愛)」
「フラタニティーはラテン語で兄弟だよね」
「自由、平等、博愛の結果何が起きたか。憎悪によるギロチン送りだった」
「イギリスのフレンドリーソサエティーも友愛組合って訳すよね。関係あるのかな」
「鳩山の友愛」と「労働組合の友愛」と「賀川の友愛」がドッキングすれば、「友愛の三位一体となる」とはしゃぐものもいた。
 6月15日には賀川豊彦が英語で上梓した『Brotherhood Economics』の日本語訳が『友愛の政治経済学』(コープ出版)として刊行される。70年前、賀川は世界恐慌後の経済立て直しを協同組合の発想で行 うべきだと世界に向けて発信したセンセーショナルな本だった。最終的に日本語以外、17カ国語に翻訳され、26カ国で出版されたというから、グローバルに 賀川の名を知らしめた本でもある。献身100年記念事業としては『友愛の政治経済学』の出版は、小説『死線を越えて』の復刻に次ぐプロジェクトだったので ある。
 22日には参院議員の鈴木寛氏が主宰する「すずかんTV」で小林教授と「友愛を語る」のトークショーが行われた。 http://www.suzukan.tv/