インドのタタ自動車は23日、約束通り10万ルピー車「nano」を発売した。当初は30万円といわれていたが、その後のルピーの下落によって日本円では20万円となった。エアコンもない最小限の装備だが、これまでオートバイに頼っていた人々にも手の届く価格帯で、爆発的に売れるだろう。昭和30年代に日本で軽自動車というジャンルが生まれてモータリゼーションに火がついたようにインドで今後、大きな社会的変革をもたらすことになるだろう。
 インドでの自動車販売をリードしてきたスズキ自動車にとっては脅威となるとも見方も出ようが、そうではない。namoによって自動車市場がさらに大きく飛躍するのだと考えたい。
 中国経済について、筆者は一貫して楽観的見通しを立ててきた。世界的金融危機の後も世界的にマイナス景気に陥っている中で少なくともプラスを維持している。自動車販売でも一時的に前年比マイナスになったが、2月にはプラスに転じた。この傾向がどこまで続くか分からないが、中国では初めて自動車を購入する層が圧倒的に多いから、買い控えという現象は先進国のように起こらないというのが筆者の見方である。BRICSのうち中国とインドが元気な話題を提供してくれていることに感謝しなければならない。(伴武澄)