9月10日、自民党総裁選が告示され、5人の候補者の名が並んだ。前日、ピョンヤンでは建国60周年記念の軍事パレードが行われ、正規軍が参加しなかっ たうえに、金正一総書記の姿がなかったことから憶測が憶測を呼び、「金総書記重態説」が世界中を駆け巡った。万が一の事態が生じたら東アジアに激震が走る ことだけは間違いない。
 そんな北東アジア情勢を背景に始まった総裁選が実に陳腐にみえた。候補者たちが掲げるキャッチフレーズからして危機感に欠けるものであった。
 麻生さんの「日本の底力」はまだしも、小池さんの「もったいない」は賞味期限切れ。与謝野さん「あたたかい改革」、石原さん「心の通った改革」には笑っ てしまう。それって何もしないということでしょ。石波さんの「私は建て直す」は意味不明。それぞれに7年前の小泉さんの「自民党をぶっ壊す」ほどの迫力に は遠く及ばない。
 外交・安全保障問題にも触れられたが、テロ特措法ばかりが安保ではない。内政と国内景気ばかりが争点となっていたのも悲しい。アジアをどうするのか、世界の貧困にどう立ち向かうのかといった大風呂敷が政治家には不可欠ではないか。
 10日午後の共同記者会見で「解散・総選挙」の時期を問われ、小池さんが「総裁になってから決めます」と言ったほかはみな「次期総裁が決めること」と他人事なのには驚いた。本気で総裁になろうとして戦っているとは到底感じられなかった。
 次期自民党総裁は福田さんの後釜の首相になる。今度ばかりは総選挙を免れない。敗れれば下野せざるをえない。そんな政治情勢である。仮に下野を免れても議席の大幅減は必至。しかも参院のねじれ状態は後2年続く。重要法案の参院可決は難しいままだ。
 立候補した5人はそんな火中の栗を拾う覚悟はあるのか。