2008年2月4日(月)証券経済倶楽部ニュース解説

 この事件が起きて困ったことになるとまず考えた。日中間が現在、薄氷を踏むような状態であるからである。ほんの小さなきっかけで反日感情が炎上する環境にあるし、日本側にもかつてのような日中友好の感情が薄れているからである。そういう思いできょう話すことをお許し願いたい。
 一昨夜、ニュースを見ながら、思いついたのは、ギョーザが中国製でなく国内製だったら、どんな反応が起きたのだろうということである。たぶん菓子パンに針が入っていた事件のように保健所ではなく警察が動き出したはずである。
 中国製ギョーザ騒動も発信源は兵庫県警と千葉県警だった。どういう訳かどちらも30日だった。メディアは「両県警が業務上過失傷害などを視野に捜査を開始」と書いた。
 最初、疑われたのはギョーザの食材であるハクサイである。ハクサイについていた農薬が原因ではないかとされた。
 何PPMだとか残留農薬の単位は、体内に蓄積して健康被害をおこす可能性の単位である。味が苦いとか、救急車で運ばれるような中毒がそんな微量の農薬で起きるはずがない。
 すぐに思ったのは、だれかが意図的に混入させた可能性である。
 翌日、30日から残留農薬説は薄れ始め、31日には混入説に大きく傾いていった。

① 千葉市のコープ花見川店のギョーザから濃度130ppmの有機リン系殺虫剤メタミドホスが検出された。検疫基準の130倍から430倍の高濃度。皮と具両方から。
② 包装袋とトレーに穴。袋は幅3ミリ×1ミリ、トレーは1ミリ。これは高砂市のギョーザ。

 問題は、それでも厚生労働省が全面に出たままになっていることである。
 混入だとすれば、可能性は過失もしくは意図的に、ということに絞られる。
 原因の探求はこの線で行わなければならない。
 過失にしても意図的にしても、警察の出番である。
 中国製の食品に対する健康被害が世界的に広がっている中での事件だったため、話はややこしくなった。結論から先に言えば、もし日本でこの農薬が混入されたのだとしたら、ことは重大である。
 多くの人が「中国製は危ない」と疑いを持っていたから、短絡的に製造元である石家荘の天洋食品工場に疑いの目が向けられたのだ。
今のところ、中国側はかなり誠意を持って調査にあたっているが、天洋食品からメタミドホスは検出されていない。反日デモが起きた3年前にこの事件が起きていたら大変なことだった。
 製造年月日や賞味期限の偽装、あるいは鶏肉の産地偽装、北海道のミンチ偽装には百歩譲って、そうしたくなる動機が存在する。雪印乳業の回収牛乳の混入についても「もったいない」というひどい動機だが“経済性”があった。
 しかし、今回のギョーザ騒動は食パンの針混入と同様に明らかに事件性が高いといわざるを得ない。従業員が普通の製造工程で農薬を入れることは考えられない。まして工場長や社長が混入を指示することなど100%あり得ない。
 消費者が食べた時点で必ず、食中毒が起きるからである。そうなるとギョーザ騒動は事件として捜査しなければならない事象となる。
 昨日の報道では、訴えは2000件を超し、病院に行った人は400人以上となった。メタミドホスが検出されたのは数例にとどまっていたが、さらに包装袋の外側からもメタミドホスが検出された事象が判明した。

 問題点:
 ①輸入食品の急増。5兆3000億円。うち中国が9000億円。アメリカに次ぐ輸入国。
 ②冷凍食品は1500億円。
 ③生鮮品は残留農薬、病害虫など水際でチェックしている。国内はほとんどノーチェックなのに対して各国とも輸入品には厳格。水際だけでなく、相手国の製造現場も厳しくチェックしている。チェックでは日本にいる普通の害虫でも処分の対象となる。
 ④自由貿易の進展で関税や数量制限が難しくなったため、「安全性」が新たな障壁になっているという指摘もある。アメリカの食肉加工工場では床と壁が垂直では掃除がしにくいとか、裸の蛍光灯はガラスが落ちる可能性があるとか、ほとんど因縁をつけるような要求さえある。EUも日本のホタテ工場で検査したとき、相当な因縁をつけて輸入禁止措置を発動したことがある。

 犯罪の場合、①日本で起きた可能性は少ないがゼロではない。②中国で起きた場合、深刻となる。たぶん相当な反日感情を持った犯罪であるし、中国側が任意捜査に応じるかどうか可能性が低く、日本国内で相当な不満ないし、反中国は感情が・・・。