6月22日の記者コラム「ばかもの、よそもの、わかもの」で百五銀行会長だった川喜田貞久さんのことを書い た。あとで分かったことだが、そのとき、川喜田さんはすでに亡くなっていたのだ。川喜田さんの祖父・半泥子は戦前・戦後を通じて著名な陶工として知られて いた。職業としての陶工ではなく趣味人としてろくろを回し続け優れた作品を数多く残した。
 津市には半泥子の作品を展示する石水博物館があり、川喜田さんはその館長をしておられた。石水博物館のサイトを久しぶりにのぞくと、川喜田さんのエッセ イの連載が始まっていた。楽しみに少しずつ読んでいたら、「最後のコラム」が最後にあって、そこに川喜田さんの逝去が報告されていた。
 なんということだ。昨年10月にコラム執筆が始まり、16本書いたところで世を去ってしまった。
 コラムで「飲酒運転」についてうならせることを書いている。
「飲酒運転が急に脚光を浴びることになった。自治体が一斉に厳罰処分を打ち出している。飲酒運転だけで懲戒免職も出てきた。ちょっと待ってくれ。裏金作り で懲戒免は何人いるのか。金は返せるが命は返せないからというのだろうか。事故を起こしたらそれなりの公法による処罰がある。それに勝手に罰を上乗せする ことは許されるのか」
「教養」について「芸術に関して多くの知識を持っていることと、感動とは無関係のように思われます」と書いています。なかなか祖父ゆずりの感性をもっていると思った。
 短い小気味のいいコラムだけが残った。合掌。