久能山東照宮に140年ぶりの葵使
4月17日、半休を取って静岡市に向かった。京都の知人から連絡があり、上賀茂神社から140年ぶりの葵使が久能山東照宮にフタバアオイを献上するから参加しないかと誘われた。17日は徳川家康の命日で、毎年全国の徳川ゆかりの人々が集まる御例祭の日だった。
東照宮は日光が本家だと思っていたが、実は久能山が本家なのだ。久能山には家康の墓があり、日光の東照宮は久能山から分霊されたものであることを初めて知った。葵使は「家康の命で1610(慶長15)年、上賀茂神社に自生していたフタバアオイを駿府城へ献上したのが始まり」。その後は江戸城にも献上していた。
明治維新で幕府が崩壊し、葵使もなくなった。上賀茂神社などがフタバアオイを平和や環境のシンボルとして復活させようと話し合う中で、江戸城への行程を記した古文書が見つかったことが分かり、神社と「京都紫野ローターアクトクラブ」などが復活を企画した。
来年の日本でのサミット開催地は北海道の洞爺湖に決まったが、京都は最も有力な候補地だった。たぶん警備を最優先して洞爺湖のホテルに決まったのだろうと思う。もし京都での開催となっていれば、主要国の首脳に子どもたちが育てたフタバアオイを”献上”しようという構想も一部であった。
賀茂川上流一帯に群生していたフタバアオイがほとんどなくなってしまったのは、開発が原因とされている。もともと清流を好む植物なので川の汚れに耐え切れなくなったのだろう。京都は1997年に世界環境サミットが開かれ二酸化炭素の削減を求めた「京都議定書」を締結した地。地球的環境問題の”メッカ”的存在となっている。フタバアオイに込められたメッセージは「環境」なのだ。
その京都のフタバアオイが持つメッセージを世界に広めたいとするのが「葵プロジェクト」の一面でもある。洞爺湖でのサミット開催で各国首脳へのメッセージ伝達は不可能となったが、プロジェクトは終わったわけではない。始まったばかりである。息の長い運動を全国に広げてもらいたいと思う。