僕たちは毎日「人間クロール」という仕事をしている。北海道新聞から琉球新報までサイトを最低、日に2往復している。コンピューターが自動的に記事を見つけて並べるのがグーグルニュースだとすれば、47ニュースはほとんど手作りといっていい。
 この人間クロールで少し前、ふだんはほとんど見ない四国アイランダーズの四国新聞のサイトの記事を読んでいたところ、シェパードという外国人選手が特大ホームランを打ったという記事を見つけた。このリーグは元プロ野球選手の石毛氏がつくったユニークな試みである。プロを目指す選手を育成するのが目的であるが、資金難から給料はきわめて安い。仕事をしながらリーグに参加している選手も少なくない。生活費を切り詰めて好きな野球を続けている選手がほとんどだ。
 そんなリーグになんで外国人が来るのだ。そもそもなんで外国人が四国の超マイナーなリーグを知っているのか。
 調べてみると、この外国人はシェパード・シバンダ選手というアフリカ南部、ジンバブエからやってきた21歳。ジンバブエではチームの主軸を務め、アフリカリーグで3位になっている。しかし、ジンバブエは元々、イギリスの植民地。クリケットは盛んだが、野球のレベルは世界には届かない。なんでそんなところに野球チームが生まれたのか。それは20年以上前に遡らなければならない。
 1992年、村井洋介とい青年が青年海外協力の初代野球隊員としてジンバブエに派遣され、小学生を中心に野球普及に努めた。村井青年は2年間の派遣期間後、帰国したが、再びジンバブエに。現地で仕事をしながら当地で野球の普及活動を続けた。
 関西学院大学野球部OBの伊藤益朗氏のブログによると「村井洋介さんは、社会人野球を引退後、野球指導のため青年海外協力隊員としてジンバブエに渡った人である。一握りの白人だけのナショナルチ-ムをコ-チすることに疑問をもち、単身旧黒人居留区の小学校をまわり、一から野球を紹介指導した開拓者だ。そして92年からの2年間で、20校余りの小学校に野球を紹介した。その後、後任の隊員が引き継いで、今では250校が野球を取り入れているそうだ。・・・野球人口を増やすとともに、ジンバブエ人の指導者や審判の養成、国産野球用具の開発、卒業後の受皿となるクラブチ-ムの整備などに力を入れたいということだ。」
 この村井氏の教え子の1人がシェパードということになれば、四国リーグにやってきた「おもろ外国人」ではすまされない。1人の日本人が20年前、ジンバブエに野球を持ち込み、野球を通じて日本とジンバブエとの交流が深まり、ひょっとしたら将来、日本のプロ野球で活躍するかもしれないのだ。
 せっかくの素材がありながらシェパードの物語が全国ニュースにならない。47ニュースではこんなニュースを取り上げられたらと思っている。時間があれば取材にも行きたいのだが、いまのところサイトづくりに精を出さねばならない。
 とにかくシェパード選手にはジンバブエのためにも頑張ってほしい。 (紫竹庵人)