神奈川新聞によると、国交省は2007年度から、東京湾の海上輸送ネットワーク化するため、水上タクシーなどの運行実験をするそうだ。
 日本は海に囲まれた国土である。かつて大坂も江戸も掘割が縦横に掘られて海から川へ、川から海へと船による輸送ネットワークが発達していた。近代 になって鉄道やトラック輸送が船に取って代わられ、水上輸送という概念を失いつつある。国交省がようやく東京湾の海上輸送に着目したことに注目したい。
 その昔、高松支局に勤務していた時、瀬戸大橋の建設が始まっていた。当時の運輸省は架橋によって生業を失う本四間のフェリー業者に補償金を支給す る交渉をしていた。本四間のフェリーは廃業になるのかと思っていたが、そうはならなかった。いまでも多くの業者が本四間の重要な輸送業務を担っている。
 その後、本四架橋は3ルートが完成したが、それぞれのルート間には距離があり、小回りの効くフェリーにはかなわない。運賃も橋よりも安いこともある。フェリーがなくならない理由のひとつである。
 バブル時、東京湾横断道路の建設が始まった。1兆円という巨額の資金をつぎ込んだ割りに役割を十分に果たしているとはいえない。交通量が少ないの なら無料にすればいいとさえ思っている。事業主体が公団だったとはいえ、国丸抱えだからどうせ税金で建設費を賄わなければならない。無料にすれば、少なく とも市民の利便には資することができる。
 この横断道路の建設が決まった時。馬鹿なことだと考えた。東京湾の対岸と高速フェリーで結べば房総半島の南部が通勤圏となり、地価高騰を抑制する 効果もあろうと思った。補助金を出したっていい。1兆円あれば、年間100億円を100年続けることができる。多くの利用者がフェリーを利用するようにな れば、そのうち補助金だっていらなくなる。
 共同通信のビルのすぐ近くに日の出桟橋がある。伊豆七島への航路の出発点である。房総半島からのフェリーが日の出桟橋に発着するようになれば、ぜひ房総に引っ越したい。そんな日が来るか来ないか。 <紫竹庵人)
 水上タクシー運航実験へ 東京湾岸のネットワーク化  2007年02月07日 13:36 【神奈川新聞】