コラムで世界を動かすトーマス・フリードマン
2006年10月14日(土)Nakano Associates 中野 有
ニューヨークタイムズのトーマス・フリードマン氏のコラムを読むのが楽しみの一つです。本日のコラムは特に惹きつけられましたのでフリードマンの魅力を紹介したくなりました。
ニューヨークタイムズに週二回掲載されるフリードマンのコラムは、世界の何百の新聞に掲載されます。キャピタルヒルの公聴会でも、議長や議員が今日のフ リードマンのコラムはこんなことを述べているとの話題で始まることがあります。フリードマンのコラムには、米国内のみならず世界に影響を与えるだけのイン パクトがあります。その憧れのフリードマン氏と会ったときには、ものすごく感動しました。
フリードマンのコラムは、最初のセンテンスから読者を惹きつける魅力に溢れています。彼は、ワシントン郊外のゴルフ場のすぐ近くに住んでいます。早朝に コラムを作成するそうです。その理由は、幼稚園に勤務する奥さんに作成したコラムをチェックしてもらいゴルフのプレーをするためだそうです。彼のモットー は、誰でも理解できるシンプルなコラムを作成することと、実際に現場を見て人に会って自分の感性でコラムを描くことだそうです。幼稚園の先生である奥様が OKといえば、ニューヨークタイムのチェックは必要なく、どんな読者からクレームがついても気にしないそうです。
我々が文章を書くときも世界で最も売れているコラムニスト、フリードマンのモットーが役に立つように思います。難解な文章を書くのでなく誰でも分かるシンプルな文章を描く、そして自分の感性で文章を練る。そのように考えれば、文章も書きやすくなるのではないでしょうか。
本日のフリードマンのエッセイの要旨です。
ポスト冷戦はベルリンの壁の崩壊で始まり、ポストポスト冷戦は米国の同時多発テロで始まりました。10月9日の北朝鮮の核実験によりポストポスト冷戦の昏迷期に入ったと思われます。
この新しいポストポスト冷戦の特徴は、第一に、アジアで核レースのスタート。北朝鮮の核の脅しで核のドミノ現象が日本、台湾、韓国で起こる可能性があり、どこまで北朝鮮の核の脅しに堪えることができるのでしょうか。
第二は、核の中東。イランは北朝鮮の道を歩むでしょう。シーア派のイランが核を保有すれば、スンニ派を中心とするサウジアラビア、エジプト、そしてシリアが核を必要とすると考えられます。
第三は、アラブの中心にあるイラクの分裂は、石油価格と国際テロをより不安定な状況に導くでしょう。
北朝鮮の国際的規範を破る行動に対し経済制裁は当然でしょう。しかし、中国とロシアの協力がなければ制裁の意味をなさない。北朝鮮の核実験のおかげで、 本格的に多国間の場で中国とロシアが関与するという見方もできるでしょう。
ポスト冷戦の安定期においては、米国が世界の安全保障の役割を受け持ち、中国やロシアは、無料でバスに乗るフリーライダーでありました。米国がイラク戦 争などで疲労してきたときに中国やロシアが協力することによりポスト冷戦の安定が可能になるように考えられます。ポストポスト冷戦の昏迷期の希望は、中国 とロシアが多国間の場で我々と同じ目的で核問題等に挑戦することでしょう。
中野さんにメール nakanoassociate@yahoo.co.jp