2006年06月23日(金)萬晩報通信員 成田 好三
 人間は何ともぜいたくであきっぽい生きものです。1度目は大きな驚きをもって迎え入れたイベントも、2度目、3度目となると、あきがきてしまいます。イベントの鮮度が次第に失われてしまうからです。
 昨シーズンに続いて2度目の開催となったプロ野球の交流戦が6月20日、全日程を終了しました。パ・リーグのロッテが2シーズン連続で優勝しましたが、大きな盛り上がりはありませんでした。
 新聞やTVなどメディアが注目したのは交流戦の試合そのものではなく、今シーズン限りでの引退を表明した新庄剛志(日本ハム)の球場でのパフォーマンスでした。今シーズンの交流戦は、ドイツW杯の陰にひっそりと咲いていた花がしぼむように、静かに終わってしまいました。
 この時期、メディアの最大かつ唯一の関心事はW杯でした。いや、W杯ではなくオーストライアに逆転負けし、クロアチアとようやく引き分け、ブラジルに大敗して1次リーグで敗退したサッカー日本代表の試合と、代表メンバー、それにジーコ監督の動向でした。
 今シーズンの交流戦はW杯と同時期の開催になったのだから、メディアの関心、つまりは国民の関心がW杯一色になっても仕方がない。プロ野球関係者はそう考えていたのでしょうか。
 しかし、彼らが本当にそう考えていたとしたら、彼らは極めて重要な時期と場面で、重大な責任放棄をしたことになります。今シーズンの交流戦は、2シーズン目の工夫というものがまったくありませんでした。
 冒頭で触れたように、人間は何ともぜいたくであきっぽい生きものです。1年目には興奮をもって迎えられた交流戦も、2年目には交流戦の開催自体が当たり 前ものとして受け止められてしまいます。そこに、W杯という巨大イベントが重なれば、興味が薄れてしまうことは、当然のことだといえます。
 今シーズンの交流戦を見ていて、ある種の違和感をおぼえました。ファンが交流戦を望んだのは、「交流戦だけを見たいから」ではなく、「交流戦も見たい」だったはずです。しかし、この時期、ファンは交流戦だけを見せられました。
 1か月以上も交流戦だけを見せられると、あきてしまいます。同じリーグ同士のカードも見たくなります。しかし、そんな当たり前のファンの望みは、交流戦が終わるまでは、お預けになってしまいました。
 プロ野球関係者の中には、交流戦をオールスター戦前後に「2分割」で開催すべきだと主張する人もいるようです。しかし、筆者はこの考えには組みしませ ん。オールスター戦後に交流戦を開催したのでは、ペナントレースの本来の目的であるリーグの優勝争いがかすんでしまうからです。
 そこで、今回はこのコラムで、筆者の交流戦改革プランを提案してみます。名づけて、交流戦「混ぜご飯」方式です。あまりよく混ぜない混ぜご飯は、白いご 飯も調味料やだしで味付けたご飯も、それにさまざまな具の味も楽しめます。この方式を採用しますと、ペナントレースは3つの段階を踏むことになります。
 第1段階。3月末か4月初めの開幕から5月の連休までは、セ・パ両リーグともリーグ内の球団とだけ試合をします。この段階では球団もファンもリーグ内の位置取りが確認できます。
 第2段階。5月の連休あけからオールスター戦前までは、同一リーグでのカードと交流戦のカードを交互に開催します。この段階ではファンは交流戦だけでは なく、交流戦も楽しむことができます。球団にとっても、昨シーズンの中日や今シーズンの読売のような、交流戦による極度の戦績の落ち込みを回避できる可能 性が大きくなります。
 第3段階。オールスター戦後は同一リーク内だけのカードに戻します。これによって、第3段階はリーグの優勝争いに焦点をより絞ることができます。第2段 階で交流戦と同一リーグ内のカードが消化できないのであれば、オールスター戦の開催時期を遅らせればいいだけのことです。それによって第3段階は、より短 期決戦型のリーグ優勝争いが展開されることになります。
 スポンサーの意向や日程調整など難しいことはあるでしょうが、ファンが望んだのは「交流戦だけ」を見たいのではなく、「交流戦も」見たいということだったことは確かです。プロ野球関係者は交流戦のあり方について再考すべきです。(2006年6月23日記)

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