2006年01月24日(火)東京大学教授(ドイツ文学) 中澤 英雄
「ホリエモン」なる詐欺師が逮捕されたことは当然のことであるが、心が寒くなるのは、この国のトップリーダーの頭(と心)の構造である。
≪小泉純一郎首相は17日昼、東京地検特捜部の強制捜査を受けたライブドアの堀江貴文社長を昨年の衆院選で自民党が支援したことについて「その時点では郵政民営化に賛成する人は応援するということなので、今の問題とは別問題だと思う」と述べた。
 首相は「会社でも、採用したけど不祥事を起こしたら、採用が間違っているといえるのか」と指摘。堀江氏に関しては「どういう問題かよく分からないが、見守っていきたい」と語った。(時事通信) – 1月17日13時1分更新≫
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060117-00000054-jij-pol
 小泉首相は、弁解するにしても、もう少しましな弁解をしてもらいたい。
「会社でも、採用したけど不祥事を起こしたら、採用が間違っているといえるのか」
小泉首相は詐欺師を「採用した」ことを認めている。つまり、詐欺師を自分の都合のために利用したことを認めたわけである。これでは弁解になっていない。
社員が不祥事を起こしたら、会社にも責任がある。
不祥事を起こすような人間を採用したら、採用が間違っていたのは当然である。その会社は正しい人物評価ができなかったわけだから。
採用時点では立派な人間が、会社で仕事するうちに不祥事に手を染めたのであれば、その会社には不祥事を起こさせるような構造的問題があったことになる。
しかもこの「採用人事」は、「社長」がその名も知らない「one of them」として採用されたわけではなく、かの杉本太蔵議員と同じく、小泉「社長」の直々の決裁を受けた人事である。「社長」の責任はまぬがれない。
「会社でも、採用したけど不祥事を起こしたら、採用が間違っているといえるのか」
 首相がこんなことを堂々と言っているようでは、これから社員が不祥事を起こすと、会社はこの科白を使うようになるのではないかと心配である。首相がなすべきなのは、詭弁による言い逃れではなく、謝罪のはずである。
 ところで、この記事がヤフー・ニュースからはすでに消され、五大中央紙のどこにも掲載されていないのは、なぜだろう?

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