超弱体球団、こんな楽天に誰がした
執筆者:成田 好三【萬版報通信員】
プロ野球開幕以来、東北楽天イーグルス(楽天)が連戦連敗街道をまっしぐらに突き進んでいます。交流戦に入っても、その勢いはとまりません。
超弱体球団・楽天に関して、スポーツライターの浜田昭八氏が5月23日付の日経・スポーツ面のコラム「選球眼」(見出し「田尾監督、まず補強を勝ち取れ」)で、「敵と戦う前に、まず補強をためらう味方のフロントと戦わねばならぬ」と書いています。
まさに正論です。浜田氏の指摘の通り、楽天が負け続ける理由は、田尾安志監督の采配ではなく、他球団に比べ戦力が極端に劣っているからです。
勝率だけでなく、楽天は打撃、守備部門などすべてのデータがダントツで12球団中、最下位の数字を示しています。
楽天は24日の中日戦でようやく10勝目を挙げました。その戦力からすれば、むしろ早い時期での2桁勝利達成といえるでしょう。それほど他球団に比べて戦力が劣っています。
しかし筆者は、楽天ファンや仙台市民の誤解を恐れますが、あえてこう主張します。「楽天は今シーズン、補強などせず、現状の戦力で戦い続けるべき」と。そうでないと、極端に弱い戦力しかもたない球団をつくらせた、球界の責任がうやむやになってしまうからです。
プロ野球に限らず、スポーツのリーグ戦で極端に弱い球団が存在することは、その球団だけでなく、リーグを構成するすべての球団とリーグ全体に不利益をもたらします。
戦う前から勝ち負けが分かっているような試合では、ファンは興味をもてなくなります。楽天と対戦する他球団の観客数は減り、TV視聴率も下がります。ファンのプロ野球離れをさらに加速させることになります。
では、極端に弱い球団をつくった、あるいはつくらせた責任は誰にあるのでしょうか、楽天の三木谷浩史オーナーや球団経営者、田尾監督など現場にあるのでしょうか。
楽天側にも責任はあります。しかし、最大の責任は根来泰周コミッショナーはじめ、ダイエー球団を買収したソフトバンクを除く既存の他球団のオーナーや親会社、球団の経営者にあります。
彼らは、楽天の新規参入に際して、楽天にリーグ戦を戦えるだけの戦力を与えなかったからです。
彼らは、礒部公一外野手を除いては、オリックスと消滅した近鉄の一軍半、二軍の選手と他球団から戦力外通告を受けた選手しかあてがいませんでした。岩隈投手はあてがわれたのではなく、オリックスの残留方針を振り切った、彼の強い意志によって楽天に移籍しました。
新規参入に際して三木谷オーナーが求めたエキスパンション(拡張)ドラフトは、時間がないという理由で拒否しました。
MLB(米メジャーリーグ)の場合は、新規参入球団には、他球団が一定の保護選手を確保した上で、選手を「供出」します。それが拡張ドラフトです。これを受けて新規参入球団はリーグ戦を戦える最低限の戦力を整えます。
なぜそうするのか。先に書いたように、リーグに極端に弱い球団が存在すると、リーグ全体が不利益をこうむるからです。
MLBでは、それでも新規参入球団が既存の他球団とまともに戦える戦力を確保するには数年、あるいはもっと長い年数がかかります。
楽天の連戦連敗の原因をつくった最大の責任は、リーグ全体の利益、ファンの利益を考慮に入れない根来氏や、自らの球団の利益にだけしがみつく他球団のオーナーや親会社、球団の経営者にあります。
彼らの責任を明確にするためにも、楽天は今シーズン、負け続けるべきだと考えます。
拡張ドラフトの拒否ばかりではありません。球界は交流試合の実施を除いては、ドラフト改革など球界の構造改革をすべて先送りにしています。
今シーズンの巨人人気の低迷、視聴率低下や入場者数の激減も、すべてはこうした球界の姿勢に対して、球界の「盟主」を自認する巨人をターゲットとして、ファンが拒否反応を示した結果といえるでしょう。(2005年5月24日記)
成田さんにメールは E-mail:narita@mito.ne.jp スポーツコラム・オフサイド http://www.mito.ne.jp/~narita/