執筆者:文 彬【早大アジア太平洋研究センター特別研究】

5月23日、共に独身で個性豊かな政治家としても有名な二人が東京で会談する予定となっている。日本の小泉純一郎総理大臣と中国の呉儀副首相である。

中国に多少なりとも関心を持っているならこの人を知らない人はいないだろう。米国『フォーブス』誌が2004年8月に発表した世界で最も影響力のある女性トップ100では、コンドリーザ・ライス大統領補佐官(現米国務長官)に次いで2位にランクインしているほど世界の外交舞台でもしばしば話題を呼んでいる女性政治家である。

石油技師出身の呉儀女史は20年にわたって石油畑を歩んだ後、1988年北京副市長就任を皮切りに対外貿易相(対外経済貿易部長)、国務委員、副総理(党内では中央政治局委員)と多くの要職を務めてきた。特にSARS(新型肺炎)騒動の最中に虚偽報告で失脚した衛生相(衛生部長)の後を受け、先頭に立ってSARS対策の指揮を取ったことで、その名声は今まで以上に高まった。中国ではサッチャー元英国首相と並んで「鉄娘子」(鉄の女)と呼ばれている。

日本側の靖国神社参拝、教科書問題、そして中国側の反日デモで両国関係が冷え切ったこの時期に中国があえて呉儀女史を日本に派遣したのは関係改善を求める中国の期待を表していると言えよう。呉儀氏は中国中央指導部の中でも日中関係の重要性を強く主張し、多くの公的な場でこれまでの中国経済建設に対する日本の援助に感謝の言葉を繰り返している数少ない要人の一人である。

呉儀女史と小泉首相のもう一つの共通点は共にダンス好きだということだ。先日、米俳優のリチャード・ギア氏と社交ダンスのポーズを取る小泉首相が中国人の視聴者にも好印象を与えたが、是非呉儀女史にも「シャル・ウィ・ダンス?」と言えるような余裕を持っていただきたい。日中関係にも時にはこのような雰囲気を和らげるパフォーマンスが必要なのである。
文さんにメール E-mail:bun008@hotmail.com WJCFコラム http://www.wjcf.net/