中国、韓国、日本の右傾化とグローバリゼーション
執筆者:土屋 直【萬晩報通信員】
中国では日本の国連安全保障理事会や教科書検定の問題をめぐり、北京で9日に1-2万人規模の反日デモが実施されるなど、反日活動は激しさを日に日に高まってきている。一方の韓国では島根県の「竹島の日」条例制定に反発し、ソウルの日本大使館前で抗議活動をおこない警官隊と衝突するという事件が起こった。
近年になってとみに民族のフラストレーションが急激に高まってきたのは何故であろうか。識者はナショナリズムの暴発の背景に中韓両国の愛国主義教育があると語るが果たして要因はそれだけであろうか。私はグロ-バリーゼーションによる、国家の液状化、民族意識の液状化現象をもう一つの要因としてあげたい。
グローバリゼーションという現象は肉体的な脅威ではなく、貨幣や資本といった抽象的な象徴によって、国家から活力を奪う。グローバル経済の中に巻き込まれた国家は、ディズニーランドやマクドナルドのハンバーガーのように均質化され、民族的な個性や文化的な伝統は衰退してゆく。人々は民族の潜在的な危機を肌で感じとるようになり、民族意識の高揚に躍起となる。ここに右傾化の要因がある。
中国は外国資本の導入によって、共産党の一党独裁体制のもと資本主義経済と共産主義経済の共存して存立する矛盾が破綻をきたし国家の液状化現象の危機に見舞われている。
一方の韓国も通貨危機により1997年12月にIMFの管理下に入り、韓国社会の基盤であった儒教文化が瓦解し民族意識の液状化現象に襲われている。
日本は金融ビックバン以来、外国資本が雪崩れこみグローバリゼーションの波にあらわれることとなり、右傾化した若者が増加している。
国家による統治機能が低下し、国民のフラストレーションがたまると、指導者は国家の結束を固め、国民の不満を解消するためのはけ口をどこかに求める。過去に戦争による侵略をおこなった日本は中韓ナショナリズムの格好のターゲットとされてはいないか。
国家間の争いによってこの液状化現象は解消しない。グローバリゼーションという現象に伴って発生するマグマのような民族のフラストレーションとどう向き合ってゆくかが唯一の解決の道ではないのだろうか。
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