執筆者:伊藤 伸【構想日本政策スタッフ】

前回、栄村の「道直し」の事例を紹介し、国の指示に従って事業を行った場合とコストの比較を示しました。今回は同様の切り口で、長野県の下條村を紹介します。
●「建設資材支給事業」
栄村の道直しと同様、国の補助を受けない村道や農道の改良事業のことを言います。村は整備に必要な材料を支給するだけで、実際の施工は集落の住民が行います。
この事業は国庫補助を受けず、国からの関与は一切受けていません。国の関与を受けて行った場合とは、事業規模や周辺整備の違いがあり一概に比較はできないものの、結果として原材料費は栄村の道直しと同規模の1/8に抑えられ、集落の住民がすべての施工を行うため、人件費や舗装代は無料。総事業費では1/32になります。
●下條村の創意工夫による主な事業
栄村と同じく合併をしないことを決めた下條村では、道路の建設資材支給事業だけでなく、様々な行政のスリム化政策を行い、実績をあげています。
○職員改革 役場の業務が忙しい12月に、職員全員を交代でホームセンターでの研修を実施。民間企業の方が更に忙しいことを実感させる。また、職員の嘱託化、新規雇用カット、係長制廃止、3保育所の統合など行政のスリム化を進め、人口当たりの職員割合が全国平均に比べて4割も少ない。
○若年対策 若者向けの安い村営住宅の建設、中学生までの医療費無料化を実施。このことが一因となって、村の人口が平成2年に比べて300人以上増加、生涯出生率は1.97で県内第1位(全国の出生率は1.36)、若年人口率が17.3%で県内第3位。
○合併処理浄化槽 汚水処理において、大部分の自治体が公共下水か農業集落排水を選んでいた時代に、下條村はコストの面を考えて合併処理浄化槽を選択。結果、公共下水・農業集落排水で想定した事業費の約1/6に削減。汚水処理の人口普及率は全国で76%のところ、下條村は96%まで整備。合併処理浄化槽の問題点とされていた水質についても、これまで苦情は一度も上がっていない。なお、全国的な汚水処理の種類別人口普及率は、公共下水が66%、合併処理浄化槽が8%、農業集落排水が2%。
○財政の健全化 最も厳しい前提条件に基づいて財政見通しを平成34年度まで試算。その状況下で行政運営できるよう徹底した財政の緊縮を行い、財政構造の長期安定性を示す「起債制限比率」が1.7%で県内1位(全国平均は8.7%)。また平成15年度の基金残高が22.9億円。当初予定より3.7億円多く、1人当りの基金残高は約55万円(全国平均は30万円)。
※起債制限比率:財政の中に占める、地方交付税措置されていない公債(純粋な借金)の割合。15%以上で警告、20%以上で一般単独事業債と厚生福祉施設事業債の発行停止、30%以上で一般事業債の発行が停止
●伊藤喜平下條村長
「これまで行政にはコスト意識があまりにもなさ過ぎた。今回の合併論議は行政が自分の市町村の状況を真剣に考えるようになったという意味で非常にプラスになった。国の借金を返すのに地方の財政が減るのは仕方ない。その代わり、国は地方の細かいことを決めるよりも、どのくらい減るのかなど大枠だけを決めていれば良い」
●最後に
「平成の大合併」により、市町村の数はこの11月1日で3000を下回った。ともに人口が5000人未満の栄村、下條村は国の方針に従わなかった「造反組」と言えるが、両村のヒアリングを通じて、小さな村でも生き残っていく術は十分にあり、地方の財政危機の観点だけでの合併論は誤っていることを実感した。
今後は、国の方針に従わないから「切る」のではなく、両村で行われている創意工夫を更に生かすことのできる環境整備が必要である。
<下條村基礎情報>【人口】4218人【世帯数】1264世帯【面積】37.66平方キロメートル(内、山林原野が79%)【H16年度当初予算】20億6700万円【特徴】長野県南部に位置し岐阜、愛知、静岡の3県が 通勤圏内にある。特産品に蕎麦、辛味大根がある。【URL】http://www.vill-shimojo.jp/
☆詳細は構想日本ホームページ http://www.kosonippon.org/prj/c/?no=05 に掲載しています。
本稿は構想日本のメルニュースから転送しました。
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