執筆者:浅川 洋【日中合資会社経営】

【中国山東省烟台市2月12日】1月22日から中国は正月にあたる「春節」に入った。その休暇の直前、1月21日付けの新聞には政府発表の大きな記事が載った。
「昨年のGDP(国内総生産)は11兆6694億元で前年比9・1%増。国民1人当たりのGDPも1090ドルと、1000ドルの大台を超えた」(写真)と新聞の見出しは踊っていた。実にタイミングの良い発表で、春節休暇中は余裕を持って休めたし、話題にもなった。
中国の新聞は、外国を批判する記事は載せるが、自国の政治や経済政策を批判したり、経済見通しを暗く書くことはほとんどない。いつも前向きで明るい記事が多いのは、大陸的なおおらかさの表れかもしれない(共産党の一党独裁政治の面は確かにあるが…)。
昨年のGDPを日本円に換算すると約150兆円なので、日本の30%程度でしかない。
中国の新聞報道によると、昨年の鉄鋼の消費量は全世界の25%、セメントは50%、石炭は30%、石油は8%、電力は13%だった、という。人口は13億人なので世界の総人口63億人の21%になる。多分、食料の消費率も人口比に近いと思う。こんなに多くの資源やエネルギー、食料を消費しても、中国のGDPは世界の3・3%に過ぎない。自国通貨の人民元とか物価が安いせいなのか、貧乏な地区が多いせいか分からないが、納得しづらい。
経済がいちばん発展しているのは、香港に隣接している深セン市だ。昨年のGDP成長率は何と17・3%と高い率だった。我々の山東省も沿岸部なので、国家の平均値よりは高いはずで、多分10数%の成長だと思う。当社の合弁会社がある4地区の生コン需要量を見ると前年比で30%の伸びを示している。また、北京や上海の生コン需要量も20%は伸びている。
生コンの需要増進率だけを見ると高成長に見えるが、工事現場の小型ミキサーでコンクリートを練って使用する通称「現場練り」の比率がまだ高い。生コン需要量だけで判断はできないが、参考にはなる。
中国は今年も経済が成長し続け、石油消費量は3億トンとなり、日本を追い越して世界2番目になると予想されている。喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、日本人の筆者には結論が出ない。(新建新聞から転載=株式会社高見澤常務)