いつまで待たせるプロ野球の日本シリーズ
執筆者:成田 好三【萬版報通信員】
プロ野球の日本シリーズがやっと終わった。日本シリーズが退屈だった訳ではない。日本一になった福岡ダイエーホークス、敗れた阪神タイガースとも、互いのホーム球場でしか勝てなかったから、勝手に『内弁慶シリーズ』と名付けたが、第7戦までもつれた展開は、それなりに見応えがあった。『やっと』と書いたのは、日本シリーズまでの『待ち時間』のことだ。
プロ野球は、ある意味で大病院の外来と同じだ。いや、それ以上にひどい。大病院の外来なら患者を半日、あるいは一日待たせるだけだが、プロ野球はファンを数週間も、いや1か月も待たせて、なお平気な顔をしている。
リーグ公式戦の優勝チーム決定から日本シリーズまでの間隔が長すぎる。ファンにしてみれば、宴会ですっかり酔いが覚めてから、もう一度酒を飲まされるようなものだ。
今季、セ・リーグは阪神が9月15日に、パ・リーグは9月30日にダイエーがリーグ優勝を決めた。日本シリーズの開幕は10月18日だ。個人タイトルの『争奪戦』が残るとはいえ、それから延々と、いわゆる『消化試合』にファンは付き合わされる。
リーグ優勝が決まった後の個人タイトル争奪戦に何の意味があるか。首位打者や本塁打王争いを巡っての醜い争いが毎年のように繰り返される。野球はチームスポーツだ。リーグ優勝を争っている中での個人タイトルにこそ意味がある。一昨年のタフィー・ローズ、昨年のアレックス・カブレラの本塁打が『55本』にとどまったことの背景には、消化試合の中での複雑な思惑が絡み合っていた。
今季、リーグ優勝が決定した時点での残り試合を調べてみた。セ・リーグで阪神が優勝した9月15日終了時点での残り試合は、その時点での順位で阪神15、ヤクルト・スワローズ15、中日ドラゴンズ13、広島カープ22、読売巨人軍12、横浜ベイスターズ14。広島の残り試合『22』は多すぎる。こんなに試合数が違っていては公平な優勝争いにはならない。
パ・リーグでダイエーが優勝を決めた9月30日終了時点での残り試合は、ダイエー3、西武ライオンズ3、近鉄バッファローズ2、千葉ロッテ・オリオンズ9、日本ハム・ファイターズ3、オリックス・ブルーウェイブ6だ。パ・リーグの日程消化は、優勝決定が半月遅れという状況を勘案しても、若干ながら早い。しかし、その後の試合は飛び飛びの日程で行われる。ファンが消化試合に長い期間、付き合わされることに変わりはない。
パ・リーグが公式戦の全日程を終了したのは10月12日。セ・リーグの全日程終了は10月16日だ。セ・リーグでは阪神の優勝決定から1か月もの間、消化試合が続き、全日程が終了したのは日本シリーズ開幕の2日前だった。
メジャーリーグでは、162試合に及ぶリーグ公式戦終了後、1日だけ間を空けてプレーオフに突入する。間の1日にも意味がある。公式戦最終戦を終えてもプレーオフ進出チームが決まらない場合は、文字通りの『ワンデイ・プレーオフ』を実施する。公式戦最終盤の9月には、20連戦程度は当たり前だ。地区優勝シリーズ、リーグ優勝シリーズ、そしてワールドシリーズへと、ほとんど切れ目のない日程が組み込まれる。
今季の場合、リーグ公式戦の全日程が終了したのは9月29日(日本時間、日付は以下同じ)。プレーオフに進出する8球団のうち、最後の権利となる『ワイルドカード』を手にした球団は、ボストン・レッドソックス(ア・リーグ)とフロリダ・マーリンズ(ナ・リーグ)だった。その2球団がプレーオフ進出を決めたのは9月26日。日本流に言えば、消化試合が行われた期間は2日間だけだった。
メジャーリーグも日本のプロ野球も3月末か4月初めに開幕する。リーグ公式戦は22試合もメジャーリーグが上回る。何故これほどの違いがあるのか。メジャーリーグは、とにかく日程通り試合を消化する。雨が降っても内野に巨大なシートをかけてやむのを待つ。試合が再開されれば、日付が変わって翌日未明になっても試合を続行する。それでも雨天中止になった場合は、調整日や移動日に試合を組み込む。1日に2試合を行うダブルヘッダーも、終盤戦になれば当たり前のように行われる。
メジャーリーグの日程をそのまま真似しろとは言わない。日本的な『流儀』がある。しかし、プロ野球界はファンが希望する日程とはどんなものか、ファンの声を聞いた上で改善策を講じるべきである。リーグ公式戦の優勝決定日から1か月もの間、消化試合を続けるリーグなど、世界中どこを探しても見つからないだろう。
プロ野球界は、状況がすっかり変わった今も、『殿様商法』を変えようとはしていない。
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