執筆者:園田 義明【萬晩報通信員】

♪ 「ジュビリー2000」のネットワーク

7月21日から開催される沖縄サミット(主要国首脳会議)にNGO(非政府組織)が結集し、昨年12月の米シアトルでの世界貿易機関(WTO)の再現が行われそうだ。

主導的なNGOは、英国に本部を置く「ジュビリー2000」。世界的ロックバンド「U2」のボノを中心に、ダライラマ、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世、米ハーバード大国際開発研究所長のジェフリー・サックス教授、デビッド・ボウイ、マドンナ、坂本龍一などの著名人がインターネットで協力を呼び掛けている。

目的は、2000年中に重債務貧困国40カ国が抱える約2700億ドルの債務を帳消しにすることである。

1999年6月のドイツでのケルン・サミットでは、議長声明で重債務貧困国に対するODA債権の全額放棄、非ODA債権の90%以上削減の方針が打ち出された。しかし、実行されたのは5ヶ国に対する債務の一部免除にすぎない。

「ジュビリー」とは、旧約聖書にしるされた50年に一度の「ヨベルの年」の英訳である。言い伝えによると、失った畑は返され、奴隷も解放され、「免罪の年」とも言われる。 さらに2000年は、新たな千年紀「ミレニアム」の始まりと重なることから、沖縄サミットにかける意気込みは並み大抵のものではない。

「ジュビリー2000」は、大規模な、しかし平和的な「人間の鎖」つくる名人らしい。1998年5月のバーミンガムでは7万人、1999年6月のロンドン、さらにはケルンのG8サミットではそれぞれ4万人を集めた。

♪ わかっていない議長国

迎える日本に不安がよぎる。とにかくNGOの扱いにまったく慣れていない。無宗教が多数派の日本人には、容易に理解し難いものの、もはや「キリスト教の世界の話」では片付けられない重みを持ってきている。今年3月30日に「ジュビリージャパン」が小渕前首相と面会したが、チンプンカンプンな受け答えで「こんな人が首相であるということが、情けない」といわれる始末。

日本が重債務貧困国40カ国に貸し付け中の債務総額は政府開発援助(ODA)と非ODAの合計で1兆1000億円強。最大の援助国、日本はいわば世界版“徳政令”運動の標的になっている。

唯一救いは、昨今の「債務免除」の実績ぐらいのものだろう。

時代錯誤から衝突などが起こらぬことを祈るばかりである。

最後に知恵を授けよう。与党が打ち上げた公的資金による株価維持策に投入する金額って、確か1兆円規模でしたよねえ。結構この株価維持策、評判悪いようですね。

皆様の御意見お聞かせ下さい。

Jubilee 2000> http://www.jubilee2000uk.org/main.html

JUBILEE 2000 JAPAN> http://www.ecolink.sf21npo.gr.jp/jubilee/

ジュビリー2000福岡 >http://www.windfarm.co.jp/members/jubilee/

坂本龍一さんのホームページにジュビリーのロゴが! >http://www.sitesakamoto.com/

沖縄ITサミットの死角――NGO、ネットで政府動かす(風見鶏)

2000/05/01 日本経済新聞 朝刊 P.2 1540字

〇…「この貴重なタイミングには、世界の期待にこたえるビッグなアイデアが必要だろう。日本の皆さんに、それにふさわしい、とっておきのニュースをお知らせしたい。それはジュビリー2000と名づけられた、最も貧しい国が最も豊かな国に負っている返済不可能な借金を一度すべて帳消しにしよう、というキャンペーンである」世界的ヒット曲を出し続けているロックバンド「U2」のリードボーカル、ボノが七月二十一―二十三日の主要国首脳会議(沖縄サミット)に向けて発したメッセージだ。

アイルランド出身で今年四十歳のボノ(本名、ポール・ヒューソン)は音楽活動の一方、英国に本部を置く非政府組織(NGO)「ジュビリー2000」の代弁者を務める。

ジュビリーとは旧約聖書に由来する「聖年」。古代イスラエルでは五十年ごとに巡ってくるこの年に、すべての借金が棒引きになったという。約七十カ国に組織を持つジュビリー2000は、二〇〇〇年中に重債務貧困国四十カ国が抱える約二千七百億ドルの債務を帳消しするよう日本や欧米などに呼び掛けている。

〇…デビッド・ボウイ、マドンナら欧米のスーパースターも賛同しているこの債務帳消し運動の特徴は何か。それはインターネットを駆使するなど情報技術(IT)革命と軌を一にしていることだ。

ミュージシャンの坂本龍一はネットを通じ、日本語と英語でこう訴えている。「日本の指導者にとって、七月の沖縄サミットはとても大切な会合のはずです。ぜひとも、累積債務を全面帳消しにし、最貧国の人びとを救うために、サミットにおいて真剣な話し合いをしてほしいと願います」

日本が重債務貧困国四十カ国に貸し付け中の債務総額は政府開発援助(ODA)と非ODAの合計で一兆一千億円強。最大の援助国、日本はいわば世界版“徳政令”運動の標的になっているのだ。

〇…ジュビリー2000の運動はカトリック教会などが中心で、先進国で唯一の「非キリスト教国」日本の姿勢が問われやすい側面もある。同時に、重債務貧困国の約八割はアフリカ諸国だけに「旧宗主国の欧州各国は日本に救済させ、自分たちの対アフリカ・ビジネスを維持したいという利害も絡んでいる」とのうがった見方さえある。

だが、ジュビリー2000がサミット参加各国に大きな影響を与えてきたことも事実だ。一九九八年五月、英国で開かれたバーミンガム・サミットでは、発祥地ということもあって約七万人が「人間の鎖」で会場を包囲した。

九九年六月のドイツでのケルン・サミットでも約五万人が「人間の鎖」で会場を囲んだ。同サミットでは、議長声明で重債務貧困国に対するODA債権の全額放棄、非ODA債権の九〇%以上削減の方針が打ち出された。

〇…国際的に活動するNGOの数は現在、数万ともいわれ、その力はもはや軽視できない。昨年十二月の米シアトルでの世界貿易機関(WTO)の閣僚会議の際、労働団体や環境団体などNGOが大規模な抗議デモを展開して混乱し、交渉が決裂したことは記憶に新しい。デモ隊は現場で携帯情報端末を使って連絡を取り合っていたという。

「NGOのネットワークが世界中に張り巡らされ、これが政府や国際機関を突き動かす新しい構図が生まれつつある」。民間国際交流団体「ピースボート」の設立者でNGOに詳しい社民党の辻元清美衆院議員はこう指摘する。

沖縄サミットに向けては、ジュビリー2000日本実行委員会が七月十九、二十の両日、那覇市内で国際会議を開く計画で、「ボノが沖縄に来るかもしれないという情報もある」(井上礼子事務局長)。同サミットの主要議題はIT革命だが、皮肉にも議長国・日本は世界中とネットで連携しているNGO対策にも神経をとがらさざるを得ない。 (編集委員 泉宣道)

園田さんは東京在住のサラリーマン。国際戦略コラムでもコラムを執筆中

園田さんにメールは yoshigarden@mx4.ttcn.ne.jp